STU48 瀧野由美子 評価

STU48

瀧野由美子 (C) STU48_officia/ltwitter

「眠れる美女」


2016年以降にデビューしたアイドルの中では大園桃子に比肩する「逸材」ではないか、と評価する。
クセのある声質、成熟したルックス、勇猛心、ライブステージ上での求心力と存在感、感情の起伏を洞察し易い仕草など、デビューした段階ですでにセンターポジションへ導かれる宿命的な要素が数多く顕在し、そのひとつひとつがファンに鮮烈な印象を与えている。まさに「大器」という表現が相応しいアイドルだろう。ビジュアルに関しては、古典的な清楚感が色濃く、作詞家・秋元康の創り出すノスタルジックな詩的世界への浸透力がきわめて高い。現代アイドルにとって、郷愁的な美がアナクロニズムに映らないのは幸運な出来事と云える。岡田奈々の具える他のアイドルを末端的登場人物へと追いやる風姿にも圧倒されることなく共存を可能にしている点も看過できない。この逸材が他のアイドルグループでデビューすることなく眠れる美女として胎動していたことは、STU48にとって、ファンにとって、奇跡との遭遇と呼べるのではないか。ただし、日常の立ち居振る舞いのなかに、アイドルとしての「鮮度」を損なうような場面も多い。この点は残念であるが、昭和の町を再現したジオラマから飛び出してきたようなアイドル像を作り上げていることの代償なのかもしれない。
”美”が彼女のアイデンティティであることは、避けられない事実だろう。表現の分野で貧弱さを抱えるが、彼女にとっての命題はそのような範疇になく、「瀧野由美子」の美がアイドルという虚構の中でどのような悶をみせるのか、絵画の鑑賞といった美ではなく、儚さや喪失に踏み込むのか、そのようなテーマが立ち現れるのではないだろうか。

STU48のコンセプトには「瀬戸内から、AKB総選挙1位を出そう。」というものがあるようだ。なるほど、瀧野由美子なら2~3年以内には実現するのではないか。悪鬼が跳梁する舞台を、唾棄すべき惨状を、古典的で正統さを抱えるアイドルが一掃する英姿(物語)は観るものにカタルシスを与えるはずだ。
勿論、瀧野由美子は今、長編小説の書き出しを書き終えたばかりである。しかしガルシア・マルケスは云う。「長編小説は書き出しですべてが決まる」と。純文学作家の綿矢りさは、芥川賞を獲った作品「蹴りたい背中」の書き出しの2行を書くのに1年という時間を要したと聞く。瀧野由美子もデビューから1年、彼女の物語の書き出しも文句なしの一文が書けたようである。あとは重厚な、豊穣な物語をファンにみせ続ければ良い。ファンは、それを注意深く見届ける必要がある。

 

総合評価 74

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 18点 ライブ表現 13点

演劇表現 12点 バラエティ 15点

情動感染 16点

 

STU48 活動期間 2017年~
評価更新履歴
2018/9/28 演劇力15→12

評価点数の見方