乃木坂46 遠藤さくら 評判記
「秘められた花」
日本人ってえのはな、静かで控えめで小さなものの中にだけ、価値を見つけるんだ
矢作俊彦/あ・じゃ・ぱん
遠藤さくら、平成13年生、乃木坂46の第四期生であり、10代目センター。
独特の均衡を保つ「アイドルと女優」の価値観を、口語に傾倒した虚実演劇による日常の濃やかさにおいて潔浄する、次世代という枠組みにはとてもおさまりきらない、きわめて清冽な登場人物。
西野七瀬に次ぐ、あるいは、西野七瀬を凌ぐ可能性をもった”秘められた花”であり、弱さと強さを表裏一体にしたその主人公感は、衰退・索漠の色が濃い現在のアイドルシーンにおいて、まさしく希望の星である。スポットライトの下に立てば言葉よりも雄弁に踊り、演技を作れば踊りよりも雄弁に言葉を吐く。踊りや演技を通し自己を闡明(せんめい)するところにこの人の、遠藤さくらの本領がある。
自己の内に特別な才能を見出すことができない不安、その空白への充実した自覚が、自己を奮い立たせるものを自己の内に見つけられないという、「確信」の不在につながる。アイドルを演じる上で確信が持てないことの弱さが、自分には、なにもない、という「存在」に対する問いかけにつながり、屈託する。遠藤さくらにとって、この屈託を解消する手段こそ演技であり、また歌と踊りであり、日常生活のなかで埋没し忘れていたであろうものを演じた役・音楽の内に見出した際の、その静かな動揺には、尽きない魅力がある。
総合評価 85点
現代のアイドルを象徴する人物
(評価内訳)
ビジュアル 17点 ライブ表現 18点
演劇表現 19点 バラエティ 15点
情動感染 16点
乃木坂46 活動期間 2018年~
2021/09/11 ライブ表現 16→17
2021/12/12 バラエティ 14→15 ライブ表現 17→18