SKE48 松井珠理奈 評価

SKE48

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「ファイアボール・ブルース」


アイドルとしての物語の量は、現役アイドルのみならず、歴代アイドルのなかでもダントツでトップだろう。しかもその物語に、冗長な場面はほとんどなく、質は悪くない。さらには、まだまだ物語を書くことへの意欲、テンション、モチベーションがまったく尽きていないのだから驚嘆に値する。文壇には「天才とは、何よりも量である」という格言があるが、これはもちろん、アイドル界にも当てはまるだろう。

10年間、アイドル界の最前線を走り続けても、松井珠理奈はまだ21才である。11才でAKB48の黄金メンバーのなかに放り込まれ、それもポジションはセンターであった。この境遇におかれた少女の「感情」はエンターテイメント的な見地からも、文学的見地からも想像することは困難である。ハードボイルド的なアイドルと云ったが、それは現在の、豊穣なストーリーを経た「松井珠理奈」のことである。自我を獲得するまえの少女がペシミズムに傾倒せず、ハードボイルドと成長できたのは、やはり生まれもった「資質」のおかげだろう。

ハードボイルドというのは、主人公たちの生きる姿勢、つまりどうしてもそこで生きる人間に不本意な妥協を強いる世間において、懸命に、ごまかしなく、しかも誇りを守り抜こうと闘う果敢さなのだ。

(福田和也「作家の値うち」)

現代のアイドルシーンにとって「主人公」を感じさせるアイドルの存在は稀有となった。稀少種と呼んでも良い。松井珠理奈や生駒里奈のように「主人公」という宿命を背負ったアイドルは異物として扱われてしまう。しかし彼女たちが書き残す豊穣な物語は、ファンとの傷だらけの絆(信頼関係)を築く。影響を受けるのは、松井珠理奈のファンだけでは収まらない。現在のアイドル界に生きる証として摑むリアリティーと、そこでの倫理観をアイドル・松井珠理奈は体現しているのである。それは、松井のファンのみならず、アイドル界全体に、ある種の「問い」を投げかけているだ。

だが私自身は、何よりも彼女の外見に強く惹かれ、すぐに主人公をイメージした。圧倒的な体格、掠れた声、ふてぶてしい表情、だが凛として美しい。彼女のすべてが、新しいジェンダーを感じさせた。彼女は男よりも男らしく、女よりも美しく、「闘う人」として男女を超越していた。

(桐野夏生「ファイアボール・ブルース」)

 

総合評価 83点

近代アイドル史に名を残す人物

(評価内訳)

ビジュアル 14点 ライブ表現 17点

演劇表現 15点 バラエティ 18点

情動感染 19点

 

・SKE48 活動期間 2008年~

評価点数の見方