STU48 甲斐心愛 評価

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「未来の可能性」


現代の日本人女性の心体の早熟さには驚かされることが多々ある。特にアイドルを志す女性にはそれが顕著で、中高生の年頃の少女が大人の世界で、当たり前のように大人と並んで立ち、大人と同じように立ち振る舞っている。

そんな世界で、甲斐心愛の、14歳の女の子ならば当たり前にもっている「無邪気さ」がひとつの性質として目立ってしまうというのは、ある種の逆転現象と表現できるかもしれない。

アイドルにとって最も重要視されるものは「成長共有」というコンテンツになるが、このピュアで屈託のない笑顔をみせる少女が、成熟した大人の女性へと変身していく過程は、アイドル本人のみならずグループの成長を象徴する物語になるのではないか。

小柄な身体が成長期を経て一変し、モデルのようなスラッとした体型になるかもしれない。広末涼子のようなショートのヘアスタイルが、気付いたらロングのヘアスタイルになっている。身体の変化とは精神の変化である。今とは同じ場面では笑わなくなるのかもしれないし、イノセントに泣き顔をみせることも少なくなるだろう。心に重い闇を抱える時期もあるかもしれない。少女が自我を獲得していく過程でどうのような隘路の壁にぶつかり、その壁をどのようにして超えるのか。そこから引き返す勇気をみせるのか、掘り進む奇抜さをみせるのか。あるいは、壁の前で呆然と立ち尽くすのか。
名は体を現す、と言う。仲間が自分のことを想って涙したと伝えられ、心が愛に満ちて、自身も落涙する。この「心愛」という名はアイドル人生を正しい方向へと導く『しるし』となってくれるだろう。

少女たちは我々の想像を超えるスピードで日々成長をしていき、ある日、昨日とはまったく異なる表情をみせるときが訪れる。少女が現実的な壁に直面し、それを乗り越える為に選択していく一つずつの答えの累積が、やがて一本の道となる。やろうとおもえば出来たけど、やらなかったこと。やりたいとおもったけど、やれなかったこと。アイドルの「成長」とは可能性を一つずつ捨てていく作業でもある。ファンにはその変化に対応する柔軟さと「if」への忘却が求められる。

「現実っていうのは二つ同時にありえないんだよ」と言ったのだが、二階堂は当たり前のように、「知ってるよ」と言った。僕はつづけて言った。
「未来の可能性はどんどん枝分かれしてるけど、現実はその一本の道にしかたどらないんだよ。可能性がいくつあっても、一つを選んだらもう他はなくなるんだよ」
「知ってるよ」
「しかもだなあ、原因と結果は一対一対応してないんだよ。結果っていうのはじつは出たとこ勝負なんだよ。たとえば机の上にあったコップが落ちたとしても、そのコップが割れるとはかぎらないだろ?コップが机の上から落ちても、割れる現実もあるし割れない現実もあるー」
「知ってるよ」
「現実世界で起きることっていうのは、想定される世界にあるいくつもの可能性が切り捨てられて、たった一つが残ったものなんだよ。(略)」
「でも現実は一つだけど解釈は一つじゃないんだよね」

(保坂和志「季節の記憶」)

 

総合評価 60点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 10点

演劇表現 7点 バラエティ 16点

情動感染 15点

 

STU48 活動期間 2017年~

評価点数の見方