乃木坂46 米徳京花 評判記

乃木坂46

米徳京花(C)音楽ナタリー

「なぜ…」

米徳京花、平成11年生、乃木坂46の第二期生。
いわゆる「IF」の系図に綴られる登場人物。あるいは、卒業に際し「なぜ…」とファンに嘆かれる存在。
おっとりとしたキュートなルックスに反し背が高くスラッとしている。ライブステージ上でのふるまいにも光るものがある。市來玲奈に似て、ケレン味のない、対象との心の距離を想わせる慇懃無礼な一面を持ち、決然としたところがあるが、上品、高潔、清楚と形容するにじゅうぶんな資質をそなえているようにおもう。鈴木絢音佐々木琴子、米徳京花の3人をして、乃木坂46のエクリチュールを具えた次世代の旗手と呼号するファンも多かった。米徳京花の場合、その経歴(水泳のジュニア​オリンピック出場選手)を見てわかるとおり、バイタリティ、フィジカルの破格さから、彼女こそ生田絵梨花の後継者だ、と憧憬を語るファンも多からず居たようだ。そのフリークスへの賛否はともかく、生田絵梨花の後継者、もしくは継承者問題をはじめてファンに意識させたメンバーとして米徳京花の名が挙がる、という点は、今日では新鮮な発見に感じる。

よって、もし彼女が現在の乃木坂46に居たら…、というアナザーストーリーを構築させるに文句なしの素材と云えるだろう。中学生でデビューし、約一年半でアイドルの物語に幕を閉じる。物語そのものは豊穣と評価するに足る厚みを持たないが、卒業発表時の残響だけでも5年選手くらいの存在感はつくれている。ただ、おなじく「IF」の系譜に立つ柏幸奈と比較すれば、神秘的なイメージに乏しい。米徳京花の場合、成長した姿(たとえば、ミス中央コンテスト準グランプリといった後日譚)を情報として取得できるため、空想や妄想といった想像力が試されず、神秘的なイメージを育むことができない。
いずれにせよ、彼女の「卒業」は早すぎた決断におもうが、当時の乃木坂46・第二期生が置かれていた境遇とは、堀未央奈を除けば、まさしく破滅への待機にほかならず、アンビションに「アイドル」が打ち破られディールを誤るのも当然の成り行きに感じる。とくに、自分には高い価値があるのだ、と確信し、膨大な可能性を自覚する少女にとっては。

余談だが、研究生がアイドルの世界から退く場合、公式アナウンスの際には「活動辞退」と表記されるのが常である。しかし米徳京花、また彼女の同期である矢田里沙子に関しては、記録をさかのぼって読むと「活動辞退」「卒業」どちらの表記も使用されている。この不整合、杜撰さ、不徹底を当時の作り手の意識のあらわれと読むとおもしろい発見があるのではないか。
また、後日卒業する佐々木琴子の卒業メッセージには、米徳京花が卒業の際に記した手紙とかさなるところがあり、これもおもしろいと感じる。文章や文体とは他者の働きかけの集大であるから、早々にアイドルの世界から姿を消した「米徳京花」というアイドルの存在感、影響力の強さを推し量れるのではないか。

 

総合評価 48点

辛うじてアイドルになっている人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 10点

演劇表現 8点 バラエティ 8点

情動感染 10点

乃木坂46 活動期間 2013年~2014年