乃木坂46 生田絵梨花 評価

乃木坂46

生田絵梨花 (C) デイリースポーツ

「現代アイドルの最高到達点」

生田絵梨花、平成9年生、乃木坂46の第一期生であり、5代目センター。
まさしく「傑物」であり、現代のアイドルシーンを代表する人物である。ドイツのデュッセルドルフ生まれ、特技はピアノという格別な”お嬢様感”は、乃木坂46が標榜する「清楚」や「リセエンヌ」の象徴と呼べるだろう。グループアイドルとして、舞台女優として枯れることのない意欲、規格にはまらず勇ましく挑戦する探究心、アイドルの宿命を貫く豊かな想像力、優雅さに添えられる自己愛と奔放、つまりキャリア確立に成功したアイドルでありながら、なおも成長しつづける姿勢を可能にする稀有な資質の持ち主であり、特筆すべきは、この群青色をしたイノセンスの数々を”奇跡との遭遇”へと結実させ、なおかつ、アイドル自身がそれに対し惜しみなく歓喜する点だろう。奇跡への実感をファンの眼前で”ありのままに”提示する果敢さこそ、生田絵梨花を現代アイドルの最高到達点へ押し上げた要因である。

生田絵梨花の他者(人物)に対する距離感のつかみ方は優れた作家を彷彿とさせる。作家とは、歴史上の人物を自身と同じ「人」として、想いを馳せ、日常に手繰り寄せる。塩野七生はユリウス・カエサルを、司馬遼太郎は坂本龍馬を、福田和也は乃木希典を叙述し、批評(フィクション)に落とし込むことで”彼ら”の日常の目線と手触りを描写した。生田絵梨花も、日々すれ違う、この先、もう二度と交錯することがない”かもしれない”他者との交流のなかでおなじ距離を作り、素顔の扉をひらく。「あの人も、わたしと同じ人間なんだ」と。この思弁の実践は、ファンとの距離感を喪失した現代のアイドルシーンにあって、自身のアイデンティティを他者に傷めつけられずに、”ありのままに”生き抜くための、あたらしい世界への扉をひらくための核心的な資質と云えるだろう。彼女が嬉々と語る憧憬には、それがアイドルの語る夢にしてはやや逸脱した、ノスタルジーに支えられた遠景や約束であるのにもかかわらず、抑えきれず共感してしまう日常の身近さがある。だから、ファンは濃密な夢のつづきへの招待を望み、アイドルの書く物語に没入してしまう。

生動する状況の中で、登場人物がその条件と戦いながら自己の可能性を押し広げてゆくような小説が読みたい、という希望は、反時代的にすぎるだろうか。

福田和也 / 作家の値うち

君の名は希望の演奏通過によって確立させたアイデンティティ。それを彼女は、何度目の青空か?で作った笑顔(演技)を転換点とし、喪失する。アイドルの”ジャンルらしさ”との決別。生田絵梨花は、自己のみならず、アイドルの限界を拡充することで、グループアイドルという狭められた役割、その可能性の幅を押し広げる。わき目もふらずに隘路の壁を掘り進む力強さから伝播する信頼感、生まれ持った自己認識の強さ、そして、強烈な自己肯定のもとに描かれる立ち居振る舞いは、グループアイドルとして前例のないユーモアと映り、次の瞬間に何が起こるのかまったく予想のつかない不安と興奮を観る者にあたえた。演劇に向ける解釈と感性を、アイドルを演じる日常に落とし込み、グループアイドルの外殻を破砕する。それは、乃木坂46がエンターテイメントの地平においてあたらしい存在理由を獲得する光景へとかさなって行き、やがて”乃木坂らしさ”の象徴になる。もちろん、彼女の躍進は演劇の世界のみにとどまらず、たとえば、今日、シーンの話題を独占する乃木坂46の写真集の快進撃、その口火を切ったアイドルにも生田絵梨花の名が挙げられる。
”コゼット”をミュージカルで演じた日、『魔女の宅急便』のキキの内側から魔法のちからが消失した朝とおなじように、「生田絵梨花」のユーモアも身体の内から欠落してしまったが、そこに見る痕跡こそ彼女が完全に「アイドル」の枠組みを貫いた証である。

グループアイドルにとっての努力とは、困難な目標を仲間と共に成し遂げた際、喜び安堵する仲間を尻目に、もう次の、新たな壁を登るための準備を始めるような行動を指す。生田絵梨花は努力ができる数少ないアイドルである。自己超克と呼ばれる行為は、周囲に疎ましさや息苦しさを与える場面も少なくはないはずだ。生田絵梨花と他のアイドルを決定的に隔てるもの、それは、無理解に囲繞され孤立しても、歩を進めることのできる独断力である。アイドル・生田絵梨花は犀の角のようにただ独り歩む。孤独や孤立感こそが、文芸という「虚構」を作り上げると熟知しているから。

 

総合評価 92点

アイドル史に銘記されるべき人物

(評価内訳)

ビジュアル 18点 ライブ表現 18点

演劇表現 20点 バラエティ 18点

情動感染 18点

乃木坂46 活動期間 2011年~

2020/6/21 再評価、加筆しました ビジュアル17→18 バラエティ17→18 情動感染17→18

 

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