STU48 僕たちはシンドバッドだ 評判記

「伝説の宝島」
歌詞について、
メジャーデビューシングル『暗闇』のカップリング曲。
デビューしたばかりの、まだまだ瑞々しいアイドルに向け、自身が把持する現在の実力(人気)をどれだけ自己認識できているのか、唐突に問う。いま、自分がどこに立っているのか、それを知らなければ、沖に出ることも太陽になることもできない、と云っている。
歌詞カードを読むと、未熟さを抱える主人公、不完全な「僕」を描いているはずなのに、旅立ちを決心する「僕」は”それなりに”自立していて、世の中の可能性や不条理を理解しているという倒錯したシチュエーションにすぐ気づく。この「僕」は、これから出遭うであろう苦難や奇跡の存在をすでに明確につかんでいる。ただ、そうした詩情の内にみる倒錯というのは、許容が容易である。今作の場合、その詩のなかに登場する「大人」や「父親」には作詞家だけではなくファンもまた含まれているであろう事実にまず突き当たる。なおかつ、その「大人」たちに常に囲繞され同じ空間に立ち笑うアイドルたちをいつまでも子供扱いしてしまう「大人」たち、という構図が明かされ、そうした皮肉のメタファとして倒錯が機能している、と自覚させられるため、詩に対する許容が生まれるわけである。
また、シンドバッドという千夜一夜物語に内在しない物語、新時代人によって付け加えられた物語を「僕」にあてはめる行為、それをアイドルの作るフィクションにすり替えて眺めてみると、おもしろい発見があるのではないか。
総合評価 58点
聴く価値のある作品
(評価内訳)
楽曲 13点 歌詞 13点
ボーカル 11点 ライブ・映像 10点
情動感染 11点
引用:見出し STU48 僕たちはシンドバッドだ
歌唱メンバー:石田みなみ、門田桃奈、佐野遥、田中皓子、土路生優里、福田朱里、藤原あずさ、森香穂、矢野帆夏
作詞:秋元康 作曲:吉田司、早川博隆 編曲:早川博隆