日向坂46(けやき坂46) JOYFUL LOVE 評判記

「初めての世界」
歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、
「メチャカリ」のCMソングとして初披露され、後日、日向坂46の『キュン』にカップリング曲として収録された。センターポジションで踊るのは小坂菜緒。
色彩をメインテーマに置く、これはやはり陳腐かもしれない。とくに『イマニミテイロ』という前日譚を備える、けやき坂46ひいては日向坂46においては、印象に弱いところがある。けれど、何としてでも普遍性を獲得しようとする試み、アイドルつまり奇跡、希望、喜びとの出遇い、を再び、何度でも繰り返し描こうとする強さ、過剰な意欲の所持から、仮にこの『JOYFUL LOVE』が表題曲としてトレーに載せられ差し出されたとしても、違和感を覚えることはないだろう。
この映像、この架空の世界に映された岐路、隘路、邂逅、交錯、そして錯綜。ここはおそらく、信号機が赤から青に変る、あのいつもの交差点ではない。出口と入り口の扉が共有された、迷路、である。そこには暗いトンネルの中を走り抜ける少女が居たり、”美しい光”のさきに消える少女が居たり、大きく背伸びし、深く深呼吸するように太陽のひかりを浴び、孤独を抱きしめる、現実から遊離しようとする少女が居る。少女たちの個々が、その両隣に立つ少女の放つ独特な”イロ”と隔たりを作り反撥しているが、しかし輪になった彼女たちを俯瞰すると、それが水に映し出されると、たしかに連なってみえる。
とはいえ、そうやって描き出された輪=”イロ”は、きわめて人工的な色彩にも感じる。聴こえるのは、アイドルの唄声だけで、鳥の鳴き声、虫の鳴き声、自然の鳴き声はきこえない。揺れるのは、アイドルの髪だけで、季節の風は、どうやら吹いていない。本音を打ち明ける笑顔、これがひとつも作られていないように見える。ファンが見落としてしまうような、少女の笑顔がこの楽曲のなかには描かれていない。だから、人工的に感じてしまうのだろう。その経時変化したプラスチックのような手触りは、この楽曲が、アイドルの現在(いま)を鮮明に映す音楽、ではなく、通り過ぎた物語、ノスタルジーの寄す処にすぎないことを教えており、尽きない希求がある。
総合評価 74点
現在のアイドル楽曲として優れた作品
(評価内訳)
楽曲 15点 歌詞 14点
ボーカル 12点 ライブ・映像 16点
情動感染 17点
歌唱メンバー:渡邉美穂、小坂菜緒、柿崎芽実、高本彩花、齊藤京子、佐々木美玲、加藤史帆、佐々木久美、 富田鈴花、松田好花、宮田愛萌、濱岸ひより、金村美玖、丹生明里、河田陽菜、井口眞緒、高瀬愛奈、東村芽依、潮紗理菜
歌詞: 秋元康 作曲:前迫潤哉、Dr.Lilcom 編曲:Dr.Lilcom