乃木坂46 橋本奈々未 評価

乃木坂46

 

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「若者のすべて」


橋本奈々未は黎明期の乃木坂46を支えたアイドルの一人であり、乃木坂46という群像劇における主要登場人物である。橋本奈々未は、白石麻衣や松村沙友理とならび、「美」の代表と目されていたが、両者とは決定的に異なる、独自の枠組みのなかで生活し、孤独に嗤いながら儚さを露呈した。通俗的ではあったが、常に対立命題的な、反時代性のある立ち居振る舞いをみせた。

橋本奈々未は読書家なアイドルでもある。読書家にありがちなブッキッシュというよりはペダントリーな印象がつよい。どちらにせよ、右も左も分からない田舎娘がエネルギーの漲っているライバルたちと互角に渡りあう手段として、本に知識と教養を求め、渡世術を身に付けたのは正解である。アイドルを演じるにあたっては「小説が演じるべき役割を教えてくれたろうし、まねすべきお手本を見せてくれたにちがいない。それに、遅かれ早かれ、なんら喜びを感じなくても、あるいは渋々ながらでも、虚栄心から、このお手本に従わざるをえなかったであろう。」(*1)文学の知恵を借りて橋本奈々未が演じきった『アイドル・橋本奈々未』。その生い立ちを私小説にすれば、まず間違いなくベストセラーになるだろう。

最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな
ないかな ないよな
きっとね いないよな
会ったら言えるかな
まぶた閉じて浮かべているよ

(フジファブリック 「若者のすべて」)

「とめていた紐が切れて仮面が剥がれ落ちたみたいに」(*2)転向をしたものの、それでも、橋本奈々未が作り上げ、遺した虚構の中には、今でも陽光を反射する湖面にボートを浮かべて昼寝をするファンが居る。衰退の前兆の色が濃くなった現在の乃木坂46を前にして、ファンは橋本の後姿を、彼女の物語を、まぶたの裏に描くことで、ゆっくりと確実に斜陽していくグループの存在を忘却し、シエスタのように、ノスタルジーに浸るのである。「卒業」から歳月が経っても、アイドルの姿形が色褪せないまま、ファンの脳裏に焼き付いて離れない、というのは、近代アイドル史において、向田茉夏、深川麻衣に続く快挙である。

 

総合評価 83点

近代アイドル史に名を残す人物

(評価内訳)

ビジュアル 18点 ライブ表現 14点

演劇表現 13点 バラエティ 19点

情動感染 19点

 

 乃木坂46 活動期間 2011年~2017年
引用:(*1) スタンダール「赤と黒」 (*2)村上春樹「1Q84」

評価更新履歴

2018/11/11 再批評しました

評価点数の見方