STU48 小島愛子 評価

STU48

小島愛子(C)STU48 2期究生メンバーtwitter 公式アカウント

「日常」

先読みのし過ぎなんて
意味の無いことは止めて
今日はおいしいものを食べようよ
未来はずっと先だよ

宇多田ヒカル / 光

小島愛子、平成9年生、STU48の第二期生。
この人を眺めているとやさしい気持ちになれる。実りある時間を過ごせる。しかもそれは、耽溺し盲目になる、という意味ではないようだ。小島愛子は、嘘偽りのない、誤魔化しのない現実の厚みをもった日常の提示を可能とするアイドルで、しかもその「日常」は、我々ファンが自身の暮らしのなかで現実感覚のもとに憧れを抱く、ずっと先の未来としての、ありふれた、しかしほとんどの人間が手に入れることのできない日常風景である。髪を結んだ恋人がキッチンに立ち、歌を口ずさみながら料理をしたり食器を洗ったりする、その当たり前の日常風景こそ今日ではけして完成しない日常、つまりフィクションであり、小島愛子はその「日常」を描き、ファンをとりこにしている。
アイドルを演じる少女からすれば、ファンに空想や幻想に支えられた非日常的なもの=夢への活力=笑顔をあたえることこそがアイドルの使命だ、と決意するに相違ない。だが、そもそもファンがアイドルに非日常を求める原動力に、ファン自身の日常における「幸福」への希求があるのもまた揺るがないわけである。小島愛子は、非日常的なものを通すことなく鑑賞者にとっての紛れもない日常を提示しており、演じ描かれるアイドルそのものが「日常」を背骨としている。そこに映される光景はまさにファンが恋い焦がれる未来=自身の人生の物語のつづきと表現できるだろう。もちろん、これは仮想空間を眺めた際の感想に過ぎず、つまりはアイドルによる濃やかな日常の再現、そのような試みが実行されていると捉えるしかない。よって、彼女を眺める人間は、この日常感は一体何なのだろうか、困惑し、より彼女の物語に没入する羽目になる。換言すれば、アイドルというフィクションが、現実と同等かあるいは現実よりも現実的に見えはじめ、ファンの心に溶かし込まれている、と云えるかもしれない。
特筆すべきは、ファンが目撃し心を揺さぶられる小島愛子の日常風景、モデレートに編みあげられまとめあげられた日常こそ、おそらく、非日常を生きるアイドルがもっとも欲する暮らし、しあわせであるという点だろう。ファンの側から見れば、アイドルを演じる少女が最終的に求めるであろうほんとうの夢がすでにそこにあり、もうアイドル自身がつかんでいるように見えるのに、しかしそれはアイドルを演じる少女があくまでも「アイドル」として語ったもの、演劇の一部にすぎないのであり、つまりアイドルを演じ幻想に生きる少女にとっては、ある意味で自己ともっとも隔てられたものである、という倒錯が立ち現れる。

シーンの消長を問う上で、小島愛子のこの横顔は画期的に映る。アイドルを鏡にしたファンが、現実における自身の夢、お金を稼ぎたいとか有名になりたいとか、そういった短い距離感における話柄ではなく、より本質的な夢、日常における最終到達点のようなものを抉り出さられる、という意味においては、AKBグループひいては坂道シリーズの通史のなかにあってありそうで実はなかったアイドルの物語であり、まさしく暗闇を貫く光をみる。こういうアイドルが出てくるうちはまだまだアイドルシーンも大丈夫だな、と。

彼女のおもしろさの一つに、ふいにアイドルという幻想の生活を手に入れた少女をおそう、これまでの自分とはまったく別の自分が、自分の意思決定にかかわらず身勝手に作られていく、特権的でありかつ宿命的なものに対する「情動」がある。
青春の消化をある程度終えた段階で職業アイドルに成る、という女性のおもしろさとは、やはり、意識的にしろ無意識的にしろ、自分とはこういうものだとする、漠然とつかみつつあったアイデンティティへの感覚が、いちど薄れる、あるいは消失しつつあるなかで、眼前には今までの自分とはまったく別の自分が作られていくことの不思議さと奇妙さ、その実感であり、小島愛子に驚かされるのは、その実感をファンの前で仔細に描いてしまう大胆さだ。また、その握りしめた自覚や、それを眺めるファンの存在によって、アイドルとしてではなく、むしろアイドルに成りかわった自己の存在理由が満たされて行くことへの感動を、これまでの人生では遭遇しなかった体験つまり奇跡への実感を、水増しせずに教えてくれる点、これは生田絵梨花を彷彿とさせる、レット・イット・ビーの実践に映る。
ある日突然アイドルになった人間が、その世界の不気味さ、常識の欠如、ある種の幼稚さを目の当たりにし、しかしそれを受け止めなければならないという不条理に対する疑問と理解をしっかりと言葉にできる人物であり、さらには、アイドルとは無条件に称賛されるべき存在だとする無垢な声量に対し疑問を向け考える姿勢すら描いており、勇敢さを受け取る。歌唱力の高さはもちろん、センターポジションに対する憧憬も語っており、これも頼もしいと感じる。

 

総合評価 70点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 13点 ライブ表現 14点

演劇表現 13点 バラエティ 15点

情動感染 15点

STU48 活動期間 2019年~

 

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