一番人気があるアイドルって誰だろう? グループアイドル人気ランキングTOP10 (AKB48~乃木坂46)

特集

「一番人気があるアイドルって誰だろう?」

アイドルってなんだろう?、この問いかけからはじまった『アイドルの打ち』、筆者はアイドルを純文学の見地から読み、小説の登場人物たちと響き合わせるように少女が書く物語に”値打ち”を付けてきた。もちろん、文学的な批評である以上、自身がアイドルに付ける評点は、世間に広く浸透する”現実的”な評価と合致しないフィクションであるという当然の事実を受け止める覚悟の要求もあった。では、そのような視点から一度はなれて、より一般論的な、文学ではなくエンターテインメントの観点を強く意識し、アイドルを眺め、ランキングを作ったらどのような結果がおとずれるだろうか(純文学とエンターテインメントの違いを端的に説明するならば、たとえば文壇において芥川賞を受賞する作家とその作品は純文学に分類され、直木賞を受賞する作家、作品はエンターテインメントの分野に置かれる)。面倒な描写や話題は抜きにして、とにかく「一番人気があるアイドル」は誰だろう?と問いかけてみる、大衆の想像力に迎合する視点を持たなければみえてこない物語もあるのではないか、いや、むしろその目線こそが活力を命題とされる現代アイドルの本質に触れるための数少ない手法のひとつなのかもしれない。たとえば、前田敦子ではなく大島優子の、渡辺美優紀ではなく山本彩の物語に没入する多くのファンの妄執に触れるにはエンターテインメントの見地に立ち、彼女たちの作る虚構=フィクションを検証しなければならないのではないか、と。

現代アイドルの人気(のようなもの)をはかる数字、いわゆる「指標」はファンの目に見えるだけでも様々な種類がある。たとえば、表題曲の”センター”回数、表題曲の選抜回数、劇場公演出演回数、CM本数、大手メディアによる知名度調査(タレントパワーランキング)、雑誌の表紙、握手完売表、ブログのコメント数、TwitterをはじめSNSでの反響、SHOWROOMの累計視聴者数、主演映画の売上からドラマの視聴率、バラエティ番組での活躍、5ちゃんねるを代表とする匿名掲示板での評判、スマホアプリのイベント順位まで、まるでFXの経済指標の重要度を見極めるようにファンはこれらひとつひとつの価値を検証し、重要と位置づけた(あるいは自身に都合が良いと確信した)指標を元に日々、議論と呼ぶには稚拙かもしれないけれど、”熱心”な討論を繰り広げている。

この”熱心”な討論を黙殺せずに、ファンの妄執という声量を意識的看過せずに、これまでに100人以上のアイドルを批評してきた筆者が、あらためてアイドルの普遍的な人気について、その順位を決めてみたいとおもう。作詞家であり、アイドルのプロデューサーでもある「秋元康」が排出したアイドルのなかで、もっとも人気を獲得したアイドルとは誰か?大衆を虜にして没入させる…、少女たちの物語はどのような魅力を湛えるのか?現役、卒業生を含め、総勢900名以上存在するアイドルの”物語”のなかから上位10人の主人公を選出しランキング形式で(エンターテインメント的な図式に則って)批評を作ってみようとおもう。文学的な見地から作った批評群(評価点数一覧)と比較した際にうまれるズレや矛盾、乖離もひとつの愉しみになるのではないか、とおもう。



・グループアイドル人気ランキング 10
日向坂46 小坂菜緒

小坂菜緒(C)佐藤裕之/週刊プレイボーイ

小坂菜緒、平成14年生、日向坂46(けやき坂46)の第二期生。
写真という静止した架空の世界の内で冠絶した生彩が放たれる…、アイドルとして古典的な資質を具えた稀有な人物であり、なおかつ、3作連続のセンターを決め、作り手に強い主人公を一貫して描かせ続けており、センターポジションを宿命付けられたアイドル固有の孤閨(あるいは彼女の置かれた境遇の場合、空閨と呼べるかもしれない)を後天的に抱え込んでいる。それは”あだち充”の書くヒロインというよりは”国見比呂”=ヒーロー的な主人公感と呼べるだろう。デビューしてまだ2年だが、すでに多くのファンを、アイドルとなって歩み出した書き出しの数行のみで自身の物語に没入させてしまったのだから、称賛に値する人物である。敢えて、不吉な胎動を挙げるならば、今後発表される楽曲=日向坂46の成功と失敗は、彼女の動向、「小坂菜緒」の成長物語次第であり、彼女の作る表情如何でグループの輝きそのものが左右されてしまうのではないか、という点だろうか。彼女が後天的に具えた圧倒的な主人公感は丹生明里や渡邉美穂が先天的に放つ輝きを凌駕しており、仮に、独りの主人公に頼らない乃木坂46的な群像劇の成立を試みるような局面を今後グループが作れたとしても、それは減衰に外ならず、まさしく隘路と名付けられるだろう。そして、この危惧こそエンターテインメント的な、大衆への迎合に対する不安の象徴ではないか、とおもう。つまり、どのような観点においても「小坂菜緒」は目が離せないアイドルと云えるだろう。



・グループアイドル人気ランキング 9
乃木坂46 橋本奈々未

橋本奈々未(C)乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学 – 冬の旅/UHB北海道文化放送

橋本奈々未、平成5年生、乃木坂46の第一期生。
アイドルに数多く存在する”文学少女”のなかでもきわめて突出したユニークな存在であり、小説から剽窃した得物を片手に並々ならぬ個性を具えたライバルたちと互角以上に渡り合った。文学少女をエンターテインメント的ランキングに選出することは倒錯を投げつけるかもしれないが、「橋本奈々未」のペダンティックな立ち居振る舞いが買う感興や揶揄には文学的な響きだけでなく、エンターテインメント的な要素が充分にある。彼女の美貌は、その横顔は、これまでにグループアイドルが描いたどのような美とも隔絶した儚さを具えており、都会に囲繞される”絶美”を入り口として多くのファンを獲得し、さらにその物語に一度踏み込んでしまったら二度と現実世界には帰ることが許されない偏向的没入感の存在は村上春樹的な文学とエンターテインメントの止揚と響き合い、まさしく白眉と名付けられる。



・グループアイドル人気ランキング 8
乃木坂46 齋藤飛鳥

齋藤飛鳥(C)ドワンゴジェイピーnews/NTT DOCOMO

齋藤飛鳥、平成10年生、乃木坂46の第一期生。
第一期生でありながら、グループアイドルの第一期生が描く独特な群像劇から隔離されてしまった興味深い存在、外伝的な主人公感を具えた人物である。彼女もまた、橋本奈々未と同様に”文学少女”だが、彼女の場合は大江健三郎的にブッキッシュである。彼女は、アイドルという非日常の通過と同時進行に、書物を通して現実世界を体験して行く…、だから口から出る言葉(感情)の数々が突拍子のない芝居じみた台詞に映り、それが健気であり愉快だが、茶化され揶揄を貰う場面も少なくはない。だが、そのような無邪気な素顔の露出はファンとの向き合い方、付き合い方、距離感の作り方、つまりアイドルを演じることへの巧みさの裏返しでもある。”アンダー”から”センター”まで坂道を駆け登るストーリー、『sing out!』において”はじめて”楽曲との融和を達成するなど、成長共有の要件を軽々と満たし、ファンのこころの深い部分を鷲掴みにして放さない。



・グループアイドル人気ランキング 7
AKB48 大島優子

大島優子(C)YUKO OSHIMA×VOCE カレンダー/講談社

大島優子、昭和63年生、AKB48の第二期生。
エンターテインメントという分野の魅力とは、観者が作り手の想像力のなかで心地の良い”昼寝”や完結した”冒険”の体験、つまり純粋な活力の提供にあるのだろう。そのような視点に降り立ったとき、大島優子の放つ輝きとは、まさしく活力そのものであり、女優に憧れた人間が「アイドル」という日常を演じる役割を担った際にみせる深刻さこそ、エンターテインメント的な見地においてファンを没入させるための恰好の動機になるだろう。”白鳥になれないペンギン”、前田敦子という圧倒的な主人公のアンチテーゼとしての役割を余儀なくされ、AKB48がアイドルに興味のなかった人間をアイドルファンへと育てシーンに没入させた要因でもある”不完全な群像劇”を成立させるための、「反動」の徴となって屹立した彼女だが、その「大島優子」の境遇に自己を投影し信頼や共闘を描く読者の数が本来王道とされる「前田敦子」の読者数を凌いでしまった事実は、エンターテインメントの虜になる人間を「大衆」と呼称する理由として十分な説得力を持つだろう。エンターテインメントでありながらも文学の境域に渡り、それを喰らう。作り手の想像力を刺激し、創造行為にはしらせる原動力を具えたアイドルこそ主人公である、と確信する前時代的な概念を嘲笑うように、支持者を引き連れて表通りを占拠する迫力さ、凄まじさから「大島優子」のエンターテインメント性の高さはユリウス・カエサルと対峙したローマの英雄ポンペイウスのストーリーのように見物人を興奮させる。



・グループアイドル人気ランキング 6
AKB48 渡辺麻友

渡辺麻友(C)文藝春秋

渡辺麻友、平成6年生、AKB48の第三期生。
アイドルサイボーグという「量産」を想起させる称号を背負うが、それが現代アイドルシーンにあって唯一人、アイドルの王道や正統を復元し古典と邂逅する物語であったのだから、矛盾を、孤独を抱え込んだ人物と云える。王道や正統と認定された人物の憂いや冷酷さ、憤りや怒りの果てにある厭世をみせたアイドルであり、その立ち居振る舞い、自己の日常の歓喜を黙殺した完全な演技行為の露出が今日では正統アイドルと呼ばれる…、そのようなアイロニーの提示が前田敦子、大島優子とは異なる地平からのあたらしい共感を獲得した。「アイドルを演ることは、生きることに値するのか?」、この問いを投げかけるアイドルは今日ではめずらしくなくなった。しかし、それがただの甘えにしか映らないのは、渡辺麻友の物語が訴える「生きることは、アイドルを演ることに値するのか」という切迫した、誇りを守り抜こうとする芝居じみた問いを一度も通過しないからである。ある日、「生まれ変わったら猫になりたい」と彼女は云った。この科白に込められた屈曲こそ、日常を演じることに対する本質的な疑問なのだろう。後に乃木坂46に提供される『空扉』ともっとも響き合うアイドルと云える。



・グループアイドル人気ランキング 5
欅坂46 平手友梨奈

平手友梨奈(C)丸谷嘉長

平手友梨奈、平成13年生、欅坂46の第一期生。
『サイレントマジョリティー』発表後、常に話題の中心に置かれ、自我を獲得するまえに自我を喪失する、というパラドクス的でアイロニックな物語を描き大衆を虜にしている。彼女は、幻想よりも現実の枠組みにおける悶えを神秘にすり替えてしまった。文芸批評のみならず虚構(フィクション)を作ることを生業にする人間にとって、彼女がさらけ出す神秘は創造行為へのきっかけを生むために配置される小石であり、彼らはそれに躓き、”存在に気付き”、虚構の扉をひらく。平手友梨奈は、アイドルというコンテンツに作り手を囚える原動力そのものであり、現代アイドルとしてその存在理由に一線を画した人物と云えるだろう。彼女を囲繞する異常な賛辞に揶揄を飛ばす観察者と、日常の不在を心配する傍観者を嘲笑うように、少女はヨロヨロと乱舞する。西野七瀬を作り手やファンからおくられる幻想や妄執へのなりきりを可能にしたアイドルと評価するならば、平手友梨奈は作り手の欲や憧憬を仕舞い込む筐体として機能し、しかし彼らの想像力の枠組みを貫き毀損するアイドルと呼べるだろうか。つまり、作り手に文学的な”役”を要求されたのならばそれに従うし、エンターテインメントを要求されたのならばそれを演じるが、結局、どちらの境域に立とうとも、どちらからも逸れてしまう。だが、その逸れた場所でのみ、彼女は自我と呼べるものを拾いあげるのかも知れない。



・グループアイドル人気ランキング 4
NMB48 山本彩

山本彩(C)週刊少年サンデー 2016年 No.49

山本彩、平成5年生、NMB48の第一期生。
エンターテインメントの地平においてもっとも強い主人公であり、読者の共感を誘う教養小説的な物語はグループアイドル史のなかで今なお傑出した輝きを放っている。アイドルポップス(ジャパニーズ・ポップス)というジャンル、枠組みならば他の追随を許さない実力の持ち主であり、『365日の紙飛行機』の普遍化の成功は彼女の表現力に依るところが大きいと評価しても過褒にはならないだろう。強さと弱さの両面を兼ね備えた「山本彩」を、オーヴァーグラウンドで果敢に闘いつづける彼女の英姿を主人公と称える声に異議を唱えることはむずかしい。紅白歌合戦選挙で第1位を獲得した要因には、やはり、山本彩の兼ね備える、大衆を虜にするエンターテイメント性の高さとアイドルとしての潔癖さ(正統さ=英雄感)があるのだろう。彼女はファンの期待を、心を決して裏切らない。不安になる嘘を作らない。その絶対的な信頼感こそ現代を生きる日本人の寄す処であり、「山本彩」を
正真正銘のトップアイドルへと押し上げた要因である。



・グループアイドル人気ランキング 3
乃木坂46 西野七瀬

西野七瀬(C)1stフォトブック『わたしのこと』/集英社

西野七瀬、平成6年生、乃木坂46の第一期生。
あらゆる観点から眺め、アイドルとして最高の実力者、幸運児である。虜にした「アイドルヲタク」の数ならば、グループアイドル史において間違いなくトップと云える。ファンや作り手から贈られる幻想や妄執への徹底したなりきりを可能にする稀有な資質の持ち主であり、ファンや作り手は、それぞれが彼女の性格を深く理解している、彼女の本当の素顔を知っている、と自負している。同時にその素顔が作り出す圧倒的な物語の厚み、豊穣さに戸惑ってもいる。日常の写実こそ西野七瀬のアイデンティティであり、「前田敦子」登場以降、前田の物語は後続のアイドルのアイデンティティを包括し、常に先回りして迎え撃ってしまったが、西野はその射程からはみ出るようにまったくあたらしい主人公感を具えたアイドルを描き、グループアイドル史のなかに「西野七瀬」という次の世代を束縛し苦渋を与える系譜を誕生させた。



・グループアイドル人気ランキング 2
乃木坂46 白石麻衣

白石麻衣(C)CECIL McBEE

白石麻衣、平成4年生、乃木坂46の第一期生。
描写による説得を忘失させる美貌の持ち主。都会のもっともひかりの眩しい場所で、もっともうつくしい存在。現代のアイドル史において間違いなく冠絶したビジュアルであり、それは彼女の作るアイドルだけでなく、白石麻衣自身の人格の一部にすらなっている。その美によって描かれる物語は、アイドルを演じる少女の成熟と喪失に対し膨大な検証余地を差し出しており、後世、現代のアイドルを振り返る際にはけして看過が許されないだろう。グループの通史に対してもエンターテインメント的な厳格さを作っており、”近寄り難さ”を持つ数少ないアイドルだが、その佇まいから生まれる距離感を唐突に発露する戯けた仕草やくしゃっとした笑顔によって離れた場所に立ったファンを一瞬で手繰り寄せてしまうのだからまったく隙きがないアイドルと云える。ある種の弱さの存在を、ヴァルネラブルの所持をしっかりとファンに触れさせることで”隙きがある”と勘違いさせ、妄執を作る、これはもう”隙きがない”と表現するほかない。グループアイドルにとって決して避けられない闘争や順位制との対峙、寂寥を物語ることも忘れていない。現代アイドルが豊穣な物語を獲得するための要件を全て充たす人物、と云えるだろう。冠絶した美貌を架空の世界への入口にして、生来の多様性が作る華やかな表情と立ち居振る舞い、そしてそれら全ての要素に含まれるトップアイドルとしての矜持は、男女問わず、多くのアイドルファンを開拓し、物語の表紙を捲るその瞬間から魅了してやまないのである。



・グループアイドル人気ランキング 1
HKT48 指原莉乃

指原莉乃(C)松永渉平/産経デジタル

指原莉乃、平成4年生、HKT48の移籍メンバー(AKB48の第五期生)。
圧倒的な才覚の持ち主であり、平成年間を通し最も多くの関心を集め、最も多くの人気をつくったアイドルである。シーンのあらゆる場面に記されたその豪華な略歴、成功は多くのアイドルを末端的登場人物に押しやり、たじろがせ、遭遇が許されない奇跡として重くのしかかっている。世論に対する思考経験と実践は他のアイドルの追随をまったく許さない閾に到達しており、利発で機敏、善と悪の判断を逡巡させるような批評に傾倒した鋭い言葉を作り、ファンと、同業者と交錯する。アイドルとの成長共有と呼ぶにはその器はあまりにも大きく、常にファンは彼女の背中を必死に追いかけるしかない。「渡辺麻友」という王の帰還に対するアンチテーゼと機能して行く構図は、前田敦子-大島優子の稚気に重なり、エンターテインメントの見地において大島優子が前田敦子を凌駕したように、指原莉乃も渡辺麻友=古典を打倒する。このスペクタクルショーが提供する興奮やスリル、情動こそエンターテインメントの醍醐味であり、指原莉乃はまさしく大衆の心をつかむエンターテインメントの女王と呼べるだろう。シーンの動向を左右する影響力と立場(ノーブレス・オブリジェ)を有し、幸運の女神にも愛されるが、それらがもたらす俗悪さのかげでふるえる寒さとさびしさを洩らさずに描いており、日常を演じる少女の孤独を映す鏡として、アイドル史に大書されるべき人物である。 


あとがき、

選出した10名のアイドルに共通するのは、グループの黎明期に登場した人物たち、という点だろうか。とくにグループアイドルにおける第一期生の価値は議論が尽くされた話題であり、グループアイドルの「世代交代」といった命題にも通じるのだろう。グループアイドルの通史の観点に立てば、前田敦子~西野七瀬(AKB48~乃木坂46)という転換を描けているものの、各グループの話題においては、グループをブレイクに導いた主人公の物語を”あたらしい”主人公が塗り替える、という出来事に私たちファンは未だ遭遇しない。この現状を打開するあたらしい可能性としての「希望」を挙げるとすれば、乃木坂46の第三期生の大園桃子、山下美月、第四期生の遠藤さくら、賀喜遥香になるだろうか。

2019/09/24 楠木融