SKE48 世界が泣いてるなら 評判記

「賢い人教えてくれ」
歌詞について、
同シングルに収録されている『春の光 近づいた夏』において、きわめて受動的な主人公を描いたのとは対照的に、今楽曲では能動的な「僕」が登場する。しかし、テーマが大仰(好意的に表現するならば壮大)すぎる。日常からあまりにもかけ離れた出来事を詩的に表現する場合、その対象との距離感、あるいは現実との境界線を曖昧にするためのケレン、つまり作家としての資質が求められるが、『世界が泣いてるなら』に限って云えば、作詞家の資質に対し頼りなさを目撃してしまう。たまたまテレビでみかけたニュースに対するおもいつきを、まるで自分の人生のすべてをかけた命題かのように妄執し、周囲に自身の情熱をふり撒き熱弁する学生をみかけることが多々ある。この楽曲の「僕」は、彼らの横顔にかさなるようにおもう。一言で云えば、やすっぽい。
映像作品について、
映画『羅生門』のような映像とストーリーが準備されている。映像を眺めるまえにいだいた歌詞の解釈を、改めるべきかどうか、批評観を揺さぶるなにかがある。作詞家によって置かれた詩的世界と通い合い境界線を探しあてることは困難だが、その「迷い」が映像の不気味さへとつながっていくのだから、おもしろい。スリリングな作品だ。また、後に誕生するアイドルグループ「欅坂46」がアイデンティティへと成立させた、「映像と演劇の融和」の先駆けとも云える作品であり、与えられた境遇次第で、如何にアイドルの姿形が生活環境に左右され、アイドルの性格が境遇通りに染まって行くのか、その事実を思い知らされる。
総合評価 53点
聴く価値がある作品
(評価内訳)
楽曲 10点 歌詞 7点
ボーカル 11点 ライブ・映像 15点
情動感染 10点
引用:見出し 秋元康/世界が泣いてるなら
歌唱メンバー:東李苑、江籠裕奈、大場美奈、北川綾巴、木本花音、佐藤すみれ、柴田阿弥、須田亜香里、高柳明音、谷真理佳、古川愛李、古畑奈和、松井珠理奈、松井玲奈、宮澤佐江、宮前杏実
作詞 : 秋元 康 / 作曲 : 川島有真 / 編曲 : 野中“まさ”雄一