STU48 大好きな人 評価

STU48, 楽曲

大好きな人ジャケット写真/STU48

「大好きな人」

歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、

STU48に所属するアイドル全員を歌唱メンバーに”選抜”した楽曲であるとともにグループが岐路に立たされた作品である。楽曲そのものの設定は使い古された物語であり、あたらしくバイブルとして機能するとは考え難いが、どのような事情が降りそそいだとしても、この段階で描かなければならなかった光景だという使命感はたしかに伝わってくる。しかし「出航」でありながら、それが”スタート”や”旅立ち”ではなく、これまでに歩んできた道に対する転換点に過ぎない事実に痛ましいすれ違いが起きており、企みのすべてがうまくいっていない。青の時代の分離、日常の塗り替えを青春とすり替える瞬間にアイドルを立ちあわせるが、それが覚悟の要求ではなく啓蒙の範疇を出ていないのは、やはり楽曲に逼迫感がなく倦怠しているのが原因だろうか。彼女たちは全力疾走をした後であり、すでに屈曲している。前に向き直らなければいけない「出航」のはずが、港に残ることを選択した人間のなかにファンだけではなくアイドル自身も含まれており、『暗闇』や『風を待つ』の記憶を寄す処に船に向けてシニカルに手をふっているという点では「出航」が備える郷愁やリグレットを巧みに表現できている、と云えるかもしれないが、もちろんそれは作り手の企みなどではなく、作り手と観者のすれ違いによる結実であろう。
暗闇』を除けば、『瀬戸内の声』から『大好きな人』まで、すべてのミュージックビデオが代わり映えのない自己模倣品であり、アイドルに与えられた家郷がまさか”この”不吉な胎動をみせる不気味な船なのか、と不安に包まれる。本当に”この産物”が希望の徴であるならば、たとえ「出航」によって不安や悲しみに囲繞されていたとしても、やはり、船客は生き生きとしているはずなのだ。そこにはどうしたって隠せない喜びがあるはずだ。だが『大好きな人』においては、生命感を伝える表情は一切描けていないし、アイドルから溢れてもいない。『暗闇』提供以降、演劇に対し成長を示したメンバーがひとりもいない点も”代わり映えをしないミュージックビデオ”の裏付けになってしまっている。

 

総合評価 31点

人に聴かせる水準に達していない作品

(評価内訳)

楽曲 3点 歌詞 7点

ボーカル 10点 ライブ・映像 4点

情動感染 7点

歌唱メンバー:石田千穂、石田みなみ、磯貝花音、市岡愛弓、今村美月、岩田陽菜、大谷満理奈、岡田奈々、沖 侑果、甲斐心愛、門脇実優菜、榊 美優、信濃宙花、新谷野々花、瀧野由美子、田中皓子、谷口茉妃菜、土路生優里、中村 舞、兵頭 葵、福田朱里、藤原あずさ、三島遥香、峯吉愛梨沙、森 香穂、森下舞羽、矢野帆夏、由良朱合

作詞:秋元康 作曲:斉門 編曲:野中“まさ”雄一

評価点数の見方