乃木坂46 伊藤万理華 評判記
「虚構を自己流の現実に取り替える」
伊藤万理華、平成8年生、乃木坂46の第一期生。
卓越した演技力を把持する。演技・演劇を通しアイドルを育む、という乃木坂46のアイデンティティに最も生かされた、また同時にそれを決定づけた存在である。グループアイドルのことをアーティストと形容する際に、わずかな躊躇を生む今日のアイドルシーンにあって、アーティストと呼ぶにふさわしい登場人物であり、彼女が残した映像作品は今なお後続のアイドルに対し計り知れない影響を及ぼしている。
映像をもってアイドルの物語化に挑むこと、虚構を自己流の現実に取り替えることが彼女にとっての自己表現だった。そのセンスをして、たとえば、サブカルチャーに焦がれたアイドルだとする声価を浴びることが多かった。しかしそれは大きな誤りだろう。この人は紛れもなく、アイドル、であり、あくまでもアイドルとしての有り様に、プログレッシブ、があるにすぎない。たとえばその存在感をして、オーソドックスではないアイドルをバイプレイヤーと扱う大衆の想像力を決定的に裏切る、本物の実力者、つまりアンダーグラウンドと見做すべきだろうか。とくに、自分の夢がいつかかならず途切れ消滅してしまうことの予感にきしむその横顔は、今日のアイドルの有り様を象徴するばかりでなく、完全に先取りしていたように思う。
総合評価 83点
現代のアイドルを象徴する人物
(評価内訳)
ビジュアル 16点 ライブ表現 17点
演劇表現 18点 バラエティ 15点
情動感染 17点
乃木坂46 活動期間 2011年~2017年