AKB48 奥真奈美 評判記

AKB48

奥真奈美(C)どんどんブログ

「かたつむり」

奥真奈美、平成7年生、AKB48の第二期生。
わずか10歳でアイドルの世界へ踏み込んでいる。ひと目見てわかるとおり、ビジュアルを得物とするアイドルだが、デビュー当時は一部のファンのあいだで幾らか話題に挙がった程度で、ほとんど注目されていない。けれど少女が成長するにつれ、その立身からイメージするモデルのような佇まい、存在感を前に、なにかただならぬ可能性をファンと同業者の多くが見いだしはじめ、大器晩成の人として期待されるようになる。事実、グループから3人目となるソロデビューを飾っており、そのデビュー楽曲『かたつむり』の歌詞を読めば、奥真奈美の成長、未来への飛翔に向けた、作詞家・秋元康の大きな期待感をうかがい知ることが可能である。
だが、結局売れなかった。なぜかこのアイドルには早期離脱者のイメージを持っていたが、記録をあらためて眺めてみれば、アイドルとして過ごした期間は約5年間とけして短くない。むしろ平均を凌ぐ長さであり、冗長にすら感じる。表題曲の歌唱メンバーに選抜された回数は一度のみ。それもデビューから1年後に発売された『BINGO!』への参加であり、以降4年間は順位闘争を前に敗北を喫している。
この奥真奈美をして、ルックスが良いのになぜか売れないアイドルの代表格と見做し、平成が終わり、令和がはじまった現在のアイドルシーンにおいてもしばしばその名前がひとつの例として(秘密兵器、最終兵器といった希望的観測、あるいはやる気さえあれば売れる、といった揶揄の代表例として)話題の中で挙げられる。

奥真奈美がアイドルとして失敗したその理由に、AKBらしさの欠如、を挙げるファンは少なくない。だがそれは大きな誤りだろう。説明するまでもなく、2期生としてAKBの門をくぐった奥は、AKBらしさ、その主流・基礎を築く立場にあり、AKB48に加入した時点で、奥はすでにAKBらしさに与す。ダンスが不得手だったり、歌声に魅力がなかったり、話がつまらなかったり、ファンに媚びを売ることができなかったとしても、それはそのまま一つの個性、一つのキャラクターとして、AKBの歴史に刻まれる。
奥真奈美が売れなかった理由は明白である。単に、ファンに向け素顔を提示できなかった、という一点にすぎない。若ければ若いほど、自分の「素顔」というものを知りようがないわけだから、これは当然の結実と云うほかにないのだが。自分の素顔を知らなければそれを隠すことはできないし、隠すことができないものを他者に教える、他者に見せる、などということは、なにか偶発的なイベントでも起きないかぎり到底不可能だろう。素顔、つまりは「夢」がまったく見えないアイドルの物語に没入できるファン、これは極端に少ない。
その意味ではこの人は、ルックスが良いのになぜか売れないアイドル、の代表格というよりも、年少者、とくに最年少という立場をうけるメンバーの屈託、年少者ゆえに素顔を描き出すことができないというその屈託を誰よりも先に味わったアイドル、と読むべきだろう。

ルックスに過剰な自信をもった少女が、しかしアイドルとしてうだつがあがらない、想像したような夢の日々を手に入れることができない、という状況を前にして反動的に振る舞ってしまうのは、これはもう心が挫けるほどありふれた光景だが、奥真奈美もそうした類型にはまっている。常に、どこか不機嫌で狷介な佇まいをもった、他者に打ち解けないアイドルで、またそれをアイドルのキャラクターに仕上げようと奔走したり、なかなかあがいたようだが、そうした努力も虚しく、思ったように進展しない物事を前に、憤りを見せている。やがて少女は、見失いつつあった日常生活を取り戻すため、進学を理由にアイドルからの卒業を発表する。結局、ファンに夢をあたえる、という使命をアイドルである内に果たすことはできなかった。

 

総合評価 43点

辛うじてアイドルになっている人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 6点

演劇表現 7点 バラエティ 10点

情動感染 8点

AKB48 活動期間 2006年~2011年

2023/02/12  誤字・脱字を修正しました