乃木坂46 松村沙友理 評判記

乃木坂46

松村沙友理(C)音楽ナタリー

「日常を演じつづける」

松村沙友理、平成4年生、乃木坂46の第一期生。
いわゆる「御三家」と呼ばれるメンバーの一人。ユニーク、この称号を授けるアイドルを1人選べと問われたら、私は迷わず彼女を選ぶだろう。乃木坂46の第一期生としてデビューし、すでに7年以上経過するが、ビジュアル、モチベーション、いずれも衰えを知らない。アイドルを演じることの気分に、何やらきわどい充実感がある。その独創性は、アイドルではない自分と、アイドルを演じる自分を決定的に隔て遠ざける、自己の内に暗さと陽気さを同時に抱えつづけるという多様性に裏付けられている。
このひとは、アイドルを眺める者をして、その価値観を根底から覆されるような、紋切り型の想像力を先回りする、ひどく不安定な、緊張感を孕んだ笑顔と言葉を編む。強烈な自意識のもと発揮されるそのウィットの針は、言葉の矛盾、行動の不一致、という、アイドルの魅力を著しく損なう状況を招きつつ、しかしそれを逆手に取り、多事多難の喧噪によってファンを自身の世界に引きずり込むという離れ業を見せる。
つまりは、作家性に優れたアイドルだ、と唱えるべきだろうか。まるで白痴のように偏執的なアイドルを日常的に描き出す人物だが、その非日常化に成功した日常への意識は映像演技においても活かされ、仮想と現実の境界線を曖昧にする。”日常を演じる”という行為に対し、非凡の才をもっている。
自分がフィクションと現実のどちらに立っているのか、やがてアイドル自身さえもわからなくなる、という狂気。アイドルが狂って見えるところに松村沙友理の魅力・才能がある。

 

総合評価 78点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 13点

演劇表現 16点 バラエティ 18点

情動感染 16点

乃木坂46 活動期間 2011年~