STU48 三島遥香 評判記

STU48

三島遥香(C)徳島新聞

「アイドルの威光」

三島遥香、平成10年生、STU48の第一期生。
STU48は2017年に立ち上げられたアイドルグループだが、結成から2年のあいだで14名のアイドルがその物語の幕を早々に閉じている。とくに2019年は激動の年となり、1年間で実に10名のメンバーが卒業・辞退をファンに告げた。1期生の三島遥香もこの年にアイドルを卒業している。
浩瀚であることが当たり前になった今日のシーンにあって3年足らずで卒業となれば、順位闘争の場で敗北を喫した人物、思うように人気を得ることができなかったアイドルだとまず考えるべきだろう。

格闘技の経験を豊富に持つ三島は(特に柔道については正真正銘のエリートであったらしく、自分のことをシロクマと称している)、アイドルの扉をひらいていなければその道に進み飛翔していたのではないか、とファンのあいだでよく囁かれた(今振り返ってみれば、そうした”イフ”をファンが思い浮かべてしまうこと自体に、三島のアイドル適性の欠乏があらわれているように思う)。格闘技経験者、というイメージによるのか、あるいはファンとのかけ合いの明快さによるのか、境遇に徳育された人、という印象が強く、好感を誘う場面が多かった。
そうした魅力、人柄の良さが作り手に買われたのか、わからないが、三島はグループ初のオリジナル楽曲『瀬戸内の声』において見事に歌唱メンバーのイスを手にしている。
しかし一方では、その印象がアイドルとしての飛翔を妨げもしたようだ。この人は、元来言葉が粗雑な人、であり、その素朴さや不器用さがアイドルが可憐であることを阻害していたし、なによりも、格闘技経験者、というイメージがその後を押し、アイドルの容貌が「美姫」からのつまはじきにあってしまった。
ステージの上で作るダンスにしても、そのフィジカルの高さが活かされる場面はまったくなく、正直、三島の踊りのなかに目を引く点はひとつもなかった。
ことSTU48においては、踊りに魅力がない、力強さ、タフさがないということは、イコール、アイドルに魅力がない、ではなく、信用する気持ちを持つことができない、という感情につながる。
事実、三島遥香というアイドルは、人気においてはほとんどの場面で最後列を走っていた。

大学への進学を理由にアイドルからの卒業を発表したが、実際に彼女が発した言葉を聴くに、卒業の報告が間断なく発せられるグループの現状と、自分がそこに含まれたことに対し、それを、負の連鎖、と表現しており、あえて説明するまでもなく、彼女の思惟の内では、この段階でのアイドルからの「卒業」が前向きなものなどではなく、後ろ向きであることがよくわかる。
とはいえ、どれだけ彼女が「不人気」であったとしても、卒業に際してそれを惜しんでくれる、次の夢を応援してくれるファンが多少なりとも確実に存在した、という点には、つまりどんな少女であっても「アイドル」に成るという特権、もはや運の女神に愛された、ほんの一握りの少女だけに許された特権を握ってしまえば、赤の他人でしかないのに自分のことのようにその「夢」を応援してくる者と出遭えるという点には今日の「アイドル」の威光、有り様がよく表され、その価値を教えているかに見える。

 

総合評価 42点

辛うじてアイドルになっている人物

(評価内訳)

ビジュアル 7点 ライブ表現 7点

演劇表現 8点 バラエティ 12点

情動感染 8点

STU48 活動期間 2017年~2019年