AKB48 ひと夏の出来事 評判記

「僕は無口になっていた」
歌詞、楽曲について、
現実を問えば、楽曲の制作過程、その時系列を知るすべはなかなかにむずかしいのだが、今作品が、同シングルに収録された『ある日 ふいに…』と同時期に手がけられたものだと仮定するのに特に不都合はないだろう。
今楽曲に付された詩情に触れ、まず気づくのは、『ある日 ふいに…』を詩作するにあたり自身の少年期へと遡った作詞家が、その記憶の”たまり”から列車に揺られ元の世界へと引き返してくる際に、つまりもう一度少年から大人へと成長・成熟していく際に列車の窓の外を流れる風景から情念をひとつひとつ切取り、それをつなぎあわせ、構築し、ひとかたまりにした物語が『ひと夏の出来事』なのだろう、という点である。
ノスタルジックな描写のなかに唐突に「アイドル」というワードが組みこまれるのは、列車が終着駅に近づくにつれ作詞家の観念も現実=現在に帰りつつあることの、その無意識の働きかけと云えるかもしれない。
ミュージックビデオについて、
作品の世界観は、楽曲のテーマと、作詞家が描き出した青春の虚構を毀さないように、丁寧に作られている。
演者については、後藤萌咲のダンスパフォーマンス=表現力が素晴らしい。手足の長さ、バランス感覚と拒絶感のある儚さには確かな個性を感受する。この作品を演じたことで、彼女がセンタータイプのアイドルであることが証明されたのではないか、とつよく感じさせる。
総合評価 61点
再聴に値する作品
(評価内訳)
楽曲 11点 歌詞 12点
ボーカル 11点 ライブ・映像 14点
情動感染 13点
歌唱メンバー:後藤萌咲、松岡はな、高倉萌香、髙畑結希、小熊倫実、山口真帆、本村碧唯、ミュージック、秋吉優花、瀧野由美子、久保怜音、日高優月、長谷川玲奈、岡田美紅、城恵理子、青木詩織
作詞 : 秋元 康 作曲・編曲 : 野井洋児