SKE48 心にFlower 評判記

SKE48, 楽曲

(C)心にFlower ジャケット写真

「凛として、うつくしく」

歌詞、楽曲について、

SKE48の29枚目シングル。センターは林美澪。
前作『あの頃の君を見つけた』において、そのタイトルどおり鮮烈な登場を描いた林美澪の、大きな存在を受け継ぐことになった少女の、その内面の屈託を先回りし抱擁するような歌になっている。
「自分らしさ」という出口が入り口につながっている迷路のような自問自答、つまりアイドルを演じる少女が常に抱えるアイデンティティへの想到を前に、啓蒙ではなく単純明快な励ましをおくっている。グループの動向を、しっかりと物語化しようとする意気込みがあり、好感触。これは、詩を書きながら考えたのではなく、アイドルシーンを眺め思考した、積み重ねられた経験の発露なのだろう。そうした”積み重ね”、要するにアイドルとの思い出があたらしく出現したアイドルの横顔に重ねられ、彼女を描写することに役立てられる、という点は、これはやや大仰で退屈な感慨だが、現在のシーンの有り様を記録しているようにもおもう。
「君」に向けられた希望と形容のすべてがセンターで踊る林美澪に還元され、アイドルのイメージを補完する点は、秋元康らしい、と云うべきか。
なによりも、抑えきれず大きな期待感を抱いてしまったファンをガッカリさせない、容易に聴き減りすることのない、魅力ある音楽をしっかりと作り出してしまえる作り手たちの才能に脱帽させられる。

ミュージックビデオについて、

捕らわれたもうひとりの自分を救うために闘う、少女たちの奮闘の劇。暴力をマーブルで包み込むというケレンを作っている。自分らしさへの追求を歌った作詞家の詩情に、アイドルの個々の魅力を引き出すような群像劇をもって回答している。
この映像を眺め、考えることは、SKE48というアイドルグループのミュージックビデオを作ることの、撮ることのむずかしさである。このグループの”売り”とは説明するまでもなく「ダンス」である。踊りによって「アイドル」を表現することに、とにかくこだわってきた。であれば、当然、映像作品の内においてもその「ダンス」を活かすべきだろうし、「ダンス」を活かした作り、「ダンス」の魅力を鑑賞者に教える作品にしなければならないという使命感のようなものに作り手連中は脅迫されるのではないだろうか。そうしたオブセッションは、これまで、SKE48のミュージックビデオの至るところに顔を出している。たとえば、作品のイントロダクションに「アイドルの演技」を置いてもその次の瞬間には一箇所に集合したアイドルたちの勢いある踊りによって冒頭部分に編まれた演技の一切が消却されてしまうなど、映像世界において一種の脱臼を引き起こす、そんな場面によく遭遇する。ミュージックビデオを、ひとつの作品=フィクションと扱うならば、やはり「演技」は必要だろうし、演技を通すことでしかアイドルの素顔には到達できないのだが、今作『心にFlower』のミュージックビデオにおいては、これまでの映像作品の瑕疵を踏襲しつつも、しかし、アイドルのそれぞれがしっかりと演技を作り、かつ、それがほとんど消却されていないように感じる。
アイドルの演技が上手いのか、幼稚なのか、といった点はまったく問題にならない。肝心なのは、作り手がアイドルに強い演技要求をし、それにアイドルが応えているのかどうか、という点に尽きる。今作で主人公を演じた林美澪は日常と径庭した表情を作れているし、末永桜花は演じたキャラクターの内にアイドルの私的な部分が写されていると錯覚させるような、そんな演技を作れている。
アイドルの個々がそれぞれに演技を作り、本に書かれた登場人物を演じているならば、それは作詞家の云う「個性」を説明する行為であるのはもちろん、アイドルとしての「個性」を獲得する瞬間とも云えるだろう。

 

総合評価 66点

再聴に値する作品

(評価内訳)

楽曲 14点 歌詞 13点

ボーカル 13点 ライブ・映像 14点

情動感染 12点

歌唱メンバー:井上瑠夏、北川愛乃、坂本真凛、野村実代、平野百菜、江籠裕奈、大場美奈、日高優月、古畑奈和、浅井裕華、鎌田菜月、熊崎晴香、佐藤佳穂、末永桜花、菅原茉椰、須田亜香里、髙畑結希、林美澪

作詞:秋元康 作曲:- 編曲:-

 

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