乃木坂46 他の星から 評判記

「他の星から」
歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、
アイドルになった少女の、日常の変化、を歌っている。
「他の星から来た 未確認たち」とは、もちろん”アイドル”のことであり、今作品の詩的世界で描かれる風景とは、夢の暮らしを手に入れた少女から欠落する日常の匂い、つまり日常への名残である。アイドルという奇跡との遭遇を手に入れた少女。彼女がいつもとおなじように駅の改札口を出ると昨日まであたりまえだった日常が、目に見える世界が一変している。夢への実感によって、すれ違う人々がターミナルキャラクター=脇役に感じてしまうことで、自己の内に自分とは違う何者かが生まれている、と覚る。その何者か、もうひとりの自分こそ、「遠い星から来た 未確認たち」であり、その得体の知れぬ存在に奪われつつある日常への名残と戸惑い、そしてそれらに対する反動を歌うとともに、架空の世界においてアイドルとして生きる覚悟を”彼女たち”は見出す……、それが『他の星から』である。
歌詞だけでなく楽曲そのものにもしっかりとしたシチュエーションが作り込まれており、メロディーに日常と非日常を行交う着地感がある。純粋に音楽を聴く、たのしむという点において、たしかな握力がある。ファンを対象にしたカップリング曲人気投票で1位を獲得したのも、納得のいく結果、と云えるだろう。ファンのそれぞれが個人的にアイドルを眺めようと、アイドルを演じる少女の日常を垣間見ようと試みる際に自然としかし必然的に再生ボタンが押されるのが今作『他の星から』なのだろう。音に触れることによって鑑賞者の内で楽曲の世界がぐんぐんとひろがって行く。しかも眼下にひろがるその世界は私たちが生活する世界とおなじ日常をもつという、きわめて独特なトリップを体験する。この手触りから、イメージとしての乃木坂らしさをもっとも克明にうった作品と呼べるのではないか。とくに斉藤優里を起用したところに作り手の美意識とその巧みさ、ケレン味を受けとる。
映像作品については、導入部こそ胸高鳴るものの、映像全般を通して、発想がやや安直か。
総合評価 75点
現在のアイドル楽曲として優れた作品
(評価内訳)
楽曲 16点 歌詞 16点
ボーカル 16点 ライブ・映像 12点
情動感染 15点
歌唱メンバー:伊藤万理華、井上小百合、斉藤優里、桜井玲香、中田花奈、西野七瀬、若月佑美
作詞:秋元康 作曲:Sugaya Bros.、松村PONY 編曲:Sugaya Bros.
引用:「」秋元康/他の星から