乃木坂46 Out of the blue 評判記

「Out of the blue」
歌詞、楽曲について、
シーン全体に見る、典型的な自己模倣品。『I see…』が一定の成功を収めた以上、模倣それ自体は避けられないのだろう。しかし今作品は構図の練り上げや深化もなく、退屈でつまらない。商品の価値を高めるために戦略性に傾倒した結果、肝心のアイドルが過去の物語のなかに置き去りにされてしまっている。人は生まれ変われる、とアイドルに歌わせる行為そのものが茶番に見える。
楽曲のタイトルについては、クリシェ化への試みによってシーンの趨勢をはかろうとする姿勢に興趣をそそるものがある。
ミュージックビデオについて、
グループアイドルソングに付されるミュージックビデオとしてはきわめて標準的。とくにめずらしくも目あたらしくもない。あえて批評家めいたことを云わせてもらえば、映像世界の結構が起伏を作っていない。この作品の構図を書いた作家は、「枕」に対しなにかつよい思い入れでもあるのだろうか、不安になる。
作り手の想像力を多少なりとも感じられた点を挙げるとすれば、『坂道研修生』からあたらしく加入した4期生と、先行組の4期生とのあいだに作られた壁をアイドルみずからが打ち壊すという演出(一昔前に流行った学園ドラマのようなシーン)くらいだろうか。
『僕は僕を好きになる』のミュージックビデオから立て続けに新手の映像作家を起用し、あらたな成長共有の誕生を試みている点は、「未来を作る」と宣言した、グループの命題にならっており、好印象。しかし今映像作品に視点を絞ると、アイドルというジャンルをステレオタイプにとらえた作家の発する、「アイドルとはこれこれこういうものだ」といった紋切り型の発想の披露にとどまっている。それだけアイドルシーンが成熟したということなのだろうか。しかしそれは、作り手が大衆の想像力の範疇で溺れてしまっていることの裏返しともとれる。『無口なライオン』『行くあてのない僕たち』、とアイドルの消長を問う作品を上梓した湯浅弘章のような鮮烈さを、若手作家に期待してしまうのはあまりにも酷だろうか。
総合評価 43点
何とか歌になっている作品
(評価内訳)
楽曲 7点 歌詞 8点
ボーカル 11点 ライブ・映像 8点
情動感染 9点
歌唱メンバー:遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香、金川紗耶、北川悠理、黒見明香、佐藤璃果、柴田柚菜、清宮レイ、田村真佑、筒井あやめ、早川聖来、林瑠奈、松尾美佑、矢久保美緒、弓木奈於
作詞:秋元康 作曲:youth case 編曲:石塚知生