SKE48 前川愛佳 評判記

SKE48

前川愛佳 (C) SKE48

「グローリー」

前川愛佳、平成9年生、SKE48の第一期生。
11歳でアイドルの扉をひらいた、グループの最年少アイドル(松井珠理奈が平成9年3月8日生まれ、前川愛佳は平成9年3月11日生まれ)。
オープニングメンバーとして23人の少女を迎えたSKE48、その書き出しの一行に大書されたアイドルは5人、松井珠理奈、松井玲奈、高田志織、中西優香(AKB48からの移籍メンバー)、そして前川愛佳である。
闘争を宿命付けられ少女の透徹さの裏にある精神的孤独、個人の内奥をファンの眼前に余すことなく差し出す松井珠理奈に対し、前川は不透明な世界を形づくる場所で無邪気に笑う力強い生彩を放つ、アイドルを演じる日常を青春の犠牲ではなく、青春そのものと捉えるアイドルの一人であり、グループをブレイクに導くための重要な登場人物として、けして少なくはない数のファンにその強い存在感を示している。
彼女たちがデビューした日から約1年後、AKB48 13thシングル 選抜総選挙が開催される。SKE48からは、1期生と2期生をあわせた42名のアイドルが参加している。だがランクインしたのは19位の松井珠理奈と29位の松井玲奈のみと、書き出しに描写された5人は、はやくも明暗を分けている。とくに前川愛佳は、この5人のなかで唯一、研究生の立場に甘んじており、「この今を青春と呼ぶのならば どうやって過ごせば輝くの?」といった詩的さ、具体的な対象を持たない寂寥に遭遇している。*1

おそらくは、SKE48というアイドルグループをはじめて岐路に立たせた登場人物がこの前川愛佳である。
今日、あらためてグループの歴史の成り立ちを読み、まず最初に注目する違和感は、物語の主役に松井珠理奈を置く、この決断によって夢と理想への献身で結ばれる絆からはじき出されてしまった、栄光へたどり着くための成長物語、その膨大な余白=可能性を提示したまま俯き現実に帰還した、一人の少女の悲痛である。
オーデションの段階で、松井珠理奈をSKE48の主人公として描く決意は、作り手の内で固まっていたようだ。であれば、その松井珠理奈という圧倒的な主人公感を具え持つ人物がグループアイドルを演じる過程で、グループアイドル特有の、少女の稚気を描き出すためのピース、たとえば前田敦子と大島優子、西野七瀬と白石麻衣といった、乱暴に云ってしまえばアイドルを育むための好敵手となる存在を、作り手は探し求めたはずである。そしてそのピースの第一候補としてまず想起されたであろうメンバーが、おそらくは前川愛佳である(あるいはそれは高井つき奈かもしれないが)。松井とおなじ年少メンバーであることはもちろん、前川には、松井珠理奈では持ち得ない瑞々しさ、鑑賞者をして、アイドルとの身近さを実感できるような、松井との相対として映し出される存在感に特別なものがあり、松井珠理奈のライバルとして準備されるだけの理由に事欠かない。
しかし現実には、松井珠理奈のアンチテーゼと機能したのは、もう一人の群雄、松井玲奈であったことは、もはや説明するまでもないだろう。年少のふたり、ではなく、”ダブル松井”、という物語の設定を、グループは選択したわけである。つまりこのある種の泡沫から生まれる、もし前川愛佳がグループの主役に選ばれていたら……、というアナザーストーリーこそ前川がSKE48を岐路に立たせた登場人物であることの証と云えるだろうか。正史に書かれた「前川愛佳」の結末、そこにあるのは、
選挙イベントの2ヶ月後、研究生のまま、明確な卒業理由を語らぬまま、架空の世界から旅立って行く、少女の儚い後姿のみである。

 

総合評価 52点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 13点 ライブ表現 7点

演劇表現 6点 バラエティ 13点

情動感染 13点

引用:*1 秋元康 / Glory days

SKE48 活動期間 2008年~2009年

 

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