乃木坂46 相楽伊織 評価

相楽伊織 (C) 乃木坂46LLC

「ここではない別の世界であること」

天然の長閑さ、カウンタックな美、「乃木坂46」という地平から遊離しないビジュアルと個性の持ち主である。戯けた様子を魅せながら、不意に物事の核心をつくような鋭い科白を置く意外性のあるアイドルを作る。譲れないポリシーを表出する場面も多く柔軟性を欠いたが、アイドルとしての矜持、イデオロギーをしっかりと確立させた人物である。乃木坂46第一期生オーディション参加の映像が出たことによって、アナザーストーリーや批評空間が生まれ、その後の彼女の物語にまとわり付いたが、デビューまでの経緯と憂鬱、卒業発表から卒業当日までの物語、彼女の後姿からは、アイドルの笑顔の作り方、ありのままの定義、それらを一つの「現代アイドル論」として展開することも可能だろう。彼女の「アイドルとしての日常」に対する意識的な立ち居振る舞いは、ミュージックビデオなどの仮構の世界で作る仕草にも浸透した。仮構を現実世界の日常で染めてしまえる力量は、相楽伊織がトップクラスの演劇表現力を持つことへの証明になっている。

アイドルの卒業発表には、常にしがみ付くファン感情がある。
本当に大切で価値あるモノとは失ったあとに気付くのではなく、失わないと気付くことができない。そして厄介なことに、それは失ってから気付いても、それを取り戻そうと奔走しても、もはや手遅れなのである。しかし、そのような感傷に浸り、ノスタルジアの世界に漂うことを決めたファンを尻目に、相楽伊織は「移動」をする。悩む人間とは行動をしない人間である。行動をする人間は悩まない。黄金期のアイドルグループにおいて、たかい資質をもった人物が20才で卒業を決心するにはどういった感情の流露があったのだろうか。境遇、屈辱、妥協、ペシミズム、譲れない矜持。相楽伊織はアイドルとして、不安の痙攣に怯え、倦怠を抱きながら深い眠りに就く毎日のくり返しよりも、ここで何もせずじっとしているよりも、「とにかく足を踏み出して、世界を知ること、体験すること」それがいかに理不尽な体験に満ちていて、絶望以外の如何なる結論も得られないとしても、前に進むことを選択したのである。これもアイドルが魅せる、自己超克、儚さのひとつである。

 

総合評価 66点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 12点

演劇表現 14点 バラエティ 13点

情動感染 12点

乃木坂46 活動期間2014年~2018年

評価点数の見方

乃木坂46