乃木坂46 早川聖来 評判記

乃木坂46

(C)早川聖来 インスタグラム公式アカウント

「演技をもって、形勢を一変させる」

早川聖来、平成12年生、乃木坂46の第四期生。
4期の中で、だれよりも文芸の才が特出していたのは、早川聖来その人だろう。あらゆる称賛に抱きしめられたいと渇望する、本能をむき出しにしたその横顔には比類のない野心と虚栄心が宿っていた。大きな期待感のもとに抜擢された舞台を開演直前に降板するという事態を引き起こしたことで才能豊かなアイドルだとするイメージに疑問符が付いたが、しかしそうした窮地に立った際に、自分はなんら才能をもたない普通の人間だ、とファンに向け大胆にも告白するというその反動の卑屈さこそ、彼女の虚栄心の大きさを裏付けるものだろう。役者として培った言い回し、周到に用意したであろう科白をもって、時代錯誤に陥ったライブ演出家を告発するなど、「演技」を形勢を一変させるための秘技のごとく用い復讐心を晴らすその欲動をして、卒業を迎える日まで、話題にこと欠かなかった。
けれどまた、アイドルとしての強さを支えていたものが人としてのその欲動の強さにほかならず、その欲動の強さが、私は普通の人間だと告白したことで、アイドルを演じることの芯から剥がれ落ちてしまったこともまた認めなければならないだろう。早川聖来がもっとも輝くのは、ファンや作り手から寄せられた期待感を一身に背負うことで、生来の野心と虚栄心を満たしていくその瞬間にあったことは間違いない。しかるに、私は普通の人間だ、と告白することで、彼女はその緊張感から、逃れ出てしまった。彷徨の末に本当の自分を発見する、アイデンティティの追求を歌った『僕のこと、知ってる?』を、普通の人に戻る、という心の挫けるほど平板な解釈をもって歌った点などは、彼女がいよいよ本当に「平凡なアイドル」になってしまったことを証し立てている。
一度解けてしまった緊張感をもとに戻す作業ほどむずかしいことはない。平凡なアイドルになってしまってからの早川は、どのような作品においても弛緩した、間の抜けた表情・ビジュアルに終始した。歌、ダンス、いずれも拍子抜けする出来栄えで、最後まで、その褪せた瞳に光が戻ることはなかった。

 

総合評価 68点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 14点 ライブ表現 13点

演劇表現 13点 バラエティ 13点

情動感染 15点

乃木坂46 活動期間 2018年~