日向坂46 渡辺莉奈評判記

「クリアカットなアイドル」

渡辺莉奈、平成21年生、日向坂46の第四期生。
これほどまでに美しい横顔をもったアイドルを私はほかに知らない。もちろん美しいのは横顔だけではない。ステージ上でスポットライトのひかりに貫かれるその姿は、アイドルとして極めて透徹したものだ。その美しさを際立たせるもの、いや、支えているであろうものが「欲」であることが、渡辺莉奈に何よりも引かれる点である。
良く言えば、その場で白黒をつける、言葉・文章に緊張した、クリアカットなアイドル、悪く言えば、社会に広く認知された、公的な表現を多用する、感情の力んだ、心に知恵の浮かばないアイドルだが、いずれにしても、言葉・文章の硬さを前にして抱く、素顔の隔てられた少女というイメージが、一つ、大きな弱点として、多くのファンに見抜かれ、順位闘争の場で苦戦を強いられてきたようである。一言で片づけてしまえば、感情移入のむずかしいアイドルだということだが、しかし彼女の言葉の硬さとは、年少者が大人の世界に渡り合うために背伸びをして準備したもの、自分を生身より大きく見せるための、自己を偽るためのものなどではなく、ただ単に、より多くの公衆に受け入れられたいと強く願う、少女の野心、つまり純粋な欲の、ひとつの現れにすぎない。
欲を持たない人間など、存在するのだろうか。いるかもしれない。だが欲望のない人間などに、アイドルなどに、人は惹かれるだろうか。大衆に歓呼されたい、果てしない称賛に抱きしめられたいと欲するからこそ、少女たちはセンターに選ばれるのである。その点において渡辺莉奈には大きな可能性を感じてやまない。とりわけ『夕陽Dance』において表現された、誘惑の楽しさを覚えたダンスは、興奮にふるえた、感情表現の優れたものである。

総合評価　71点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

（評価内訳）

ビジュアル　15点　ライブ表現　14点

演劇表現　14点　バラエティ　14点

情動感染　14点

日向坂46　活動期間　2022年～