NMB48 市川美織 評判記

AKB48, NMB48

市川美織(C)日刊スポーツ

「フレッシュレモンになりたいの」

市川美織、平成6年生、AKB48の第十期生。後にNMB48へ移籍する。
そのめいぼう可憐な佇まい、妖精を想起させるビジュアルをもって「アイドル」を最大限に体現している。
「フレッシュレモンになりたいの」、という、ほとんど意味のわからない、夢を叶えたいという若者の欲動の発意だけに支えられた言葉を魔法の呪文のごとく唱えつづけることで、それを非日常的なものに見せる、つまりアイドルへの変身にチャレンジするという、現代のアイドルシーンにおいては、もはや見慣れた、陳腐な光景にあって、同じカテゴリーに分類される多くの少女と違い、市川がアイドルとして大成できたのは、その生まれ持った美貌もさることながら、空想のなかでアイドルを追究していく姿勢に適う、境遇に挫けることのない根気の強さに因る。ひときわ小柄で、華奢だけれど、熾烈な序列闘争の場を「笑顔」で勝ち抜く、その姿がなによりも魅力的である。
その柔和な横顔からは想像できないほどの、ある種つよい偏向をもった人でもある。たとえばそれは踊りにおいて最も明らかである。市川自身、インタビューをとおし語っているが、踊ることで、つまり身体の動きで音楽の意味を明確にしようとする姿勢の強さは、一転、ストラテジーの色の濃い人物であることを伝える。しかし市川の魅力はそうした資質に認めるのではない。歌うにしても、踊るにしても、いかなるときも意識の組み立てを怠らない作為的なアイドルでありながら、アイドルに期待される幻想的イメージを、その可憐さにおいて毀さない点に、市川美織の才能がある。これはもう、アイドルの神に祝福された登場人物と云うほかない。

 

総合評価 75点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 16点

演劇表現 15点 バラエティ 15点

情動感染 14点

NMB48、AKB48 活動期間 2010年~2018年