STU48 森下舞羽 評判記

「戦闘性に象られたアイドル」
森下舞羽、平成16年生、STU48の第一期生。
1期の最年少。その容貌の鮮烈さをして、アイドルを演じる少女が自身を戯画化し「アイドル」を物語るのではなく、ファンが「アイドル」を戯画化し語るところなどは、たとえば乃木坂46の久保史緒里とそのファンの距離感、間合いとよく似ていて、ファンの視線がアイドルをアートに仕上げている。
フォトジェニック少女、と大手メディアに言わしめたとおり、誰の目にも明らかなビジュアルの魅力をそなえもつ。が、一転、個性が強すぎるのだろうか、ファンのあいだで広く好悪がわかれるアイドルであるらしく、物語の談柄に欠き、これまでのところ、ほとんど禿筆をふるっている。
表題作の歌唱メンバーに名を連ねたのは『大好きな人』『思い出せる恋をしよう』の2作品のみ。いずれも、俗に言う「全員選抜」を敷いた作品であり、実績に乏しい。アイドルがファンの現実に押し入るような、アイドルの物語化、季節の記憶化が、まだまだ起きていない。
とはいえ、アイドルの物語が浩瀚であることが当たり前になった現在のシーンに鑑みれば、この少女の内には、STUのなかにあっては独自の将来性、可能性が秘められていると認めてしかるべきだとおもう。
注目すべきはやはりそのビジュアルであり、AKBグループひいてはSTU48という光の薄れた星にあっても鑑賞者の心の内になにがしかの印象を強く刻み込むそのビジュアルは、モデル、果ては俳優への可能性を想わせる。
門脇実優菜の背中を見て「踊り」を、「アイドル」を育んできた少女だけあって、長身アイドルの多くが躍ることを不得手とし、ステージの上で滑稽なダンスを披露して音楽の魅力を損なうのに対し、森下はモデルのようなスラッとしたスタイルをもちながらも平均を凌ぐライブ表現力を有しており、むしろその生来の特性を活かし、スポットライトの下では日常のどの場面よりもアイドルが生き生きと映されている。
もちろん日常における素顔にもなかなか魅力的なところがあって、同期であった市岡愛弓との稚気に溢れたエピソードに象徴する、自意識に過剰になった若者特有の精気のとげとげしさが18歳になった今もまだ残っていて、ファンの眼前で、これだけは譲れないというもの、に未だ出会えていない、と語ったり、微笑ましい。アイドルらしからぬ戦闘性に象られたその横顔は、勝気で美しい。
その横顔が瀧野由美子や石田千穂にどこか重なる点、つまりSTU48というアイドルグループによって育て上げられたアイドルとは一体どのようなアイドルなのか、という点において、しかしグループのエースである瀧野、石田、両名のデミタスには収まりきらない森下の存在感は興味深い。
総合評価 54点
問題なくアイドルと呼べる人物
(評価内訳)
ビジュアル 14点 ライブ表現 13点
演劇表現 8点 バラエティ 7点
情動感染 12点
STU48 活動期間 2017年~