STU48 藤原あずさ 評判記

STU48

藤原あずさ(C)TOKYO HEADLINE

「制服の重さ」

藤原あずさ、平成10年生、STU48の第一期生。
18歳でデビューしている。ゆえに若手でありながらも、なかなか落ち着いた雰囲気を持つ。歯切れが良く、日常の立ち居振る舞いに貫禄がある。仲間のアイドルがこぼす悩み・不安を前にして、それを豪快に笑い飛ばす大胆さ、包容力のある人らしく、アイドルだけではなくファンからもまた信頼されたようだ。一転、そうした生来の風貌が育てる印象の強さ、つまり人柄の良さを他者に印象付けてしまうことに苦渋したようでもある。
この種の性格の持ち主は、他人に打ち明けられた悩みに対しては積極的に解決しようと行動する、前向きな姿勢を見せるが、自己の内に抱え込んだ悩み、不安の解決にはきわめて消極的であり、胸に秘めた苦渋を他者に唐突に問われ看破された際には、激しく動揺し、いつものように冷静ではいられなくなる。藤原あずさを眺め、残念に想ったのは、彼女がアイドルとして過ごした時間のなかでは、そうした情動を引き起こすようなイベントが卒業するその日まで、結局、一度も起こらなかった点だろうか。
とはいえ、藤原あずさ自身の物語はけして平穏、平坦なものではない。アイドルグループの立ち上げメンバーとして、その激動期、黎明期のなかで、彼女もまた拉がれ、慟哭している。
STU48のメジャーデビュー作品であり、なおかつグループの最高傑作として同業者、ファンともに評価の一致する『暗闇』の歌唱メンバーに選抜され、アイドルとして順調なスタートを切れたかに見えたが、セカンドシングル『風を待つ』では早々に「選抜」から脱落する。STU48の出港、本格的な旅路のスタートを楽曲の内に再現し告げたサードシングル『大好きな人』において再び「選抜」に返り咲くも、次作『無謀な夢は覚めることがない』においては再度表題作の歌唱メンバーから抜け落ちるなど、そのキャリアを一瞥しただけでも浮き沈みの激しいメンバーであることが容易に見て取れる。
藤原あずさが思うように売れなかった理由は明白で、それは単に、淡泊にすぎ、また芯が強く、冴えていて、まったく可憐ではなかったから、としか言いようがない。仲間のアイドルに向け見せる笑顔、包容力、寛容さ、つまり一種の素顔がファンの内でたしかな魅力として映るのに、しかしそれがアイドルの素顔としては捉えられない、という修正のきかないズレが、このアイドルにはある。
この人の内に、並ではないもの、があるとすれば、それはダンス未経験者でありながら標準を上回るライブ表現力を身につけている、という点になるだろうか。しかしそれは、順位闘争を凌ぐために日々鍛錬し、見事に成長を果たしたそのストーリー展開に感嘆した際の感慨などではない。ダンス未経験者であり、そのとおりアイドルの扉をひらいたばかりの頃はまったくの未熟者であった少女がSTU48の誕生に立ち会い、まだイロをもたない新しいアイドルグループのなかでグループとアイドルが共に激動の時を駆け抜け、成長した結果、シーンにあっては平均を凌ぐライブ表現力を備えることになった、という、第一期生を通し一つのアイドルグループの特性の成り立ちを確信するところに、藤原あずさの成長そのものがSTU48というアイドルグループのアイデンティティを相対として映し出すところに、この人の、このアイドルの見どころがあるのだ。

 

総合評価 52点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 9点 ライブ表現 13点

演劇表現 9点 バラエティ 13点

情動感染 8点

STU48 活動期間 2017年~2020年

2023/03/27  編集しました(初出 2019/03/05)