AKB48 サステナブル 評価

AKB48, 楽曲

(C)AKB48「サステナブル」初回限定盤Type Aジャケット

「サステナブル」

ミュージックビデオ、楽曲について、

草原で踊る少女。風になびく草叢。選ばれた19人のアイドルに踏みつけられ倒れたままの無数の草花を見て抱く感情は儚さではなく虚しさである。

タイトルにグループアイドルの通史に対する希望や期待を込めているのは理解できるが、そこから緊張感は伝わって来ない、弛緩している。観測者効果と例えればよいのか、”表通り”に対する差別化への過剰な意識が作品を空回りさせている。王者が王道に固執するあまり、原点回帰という甘い自己満足を寄す処にして、シーンを牽引するような試みに打って出ず、”ライバル”と勝負すらしておらず、結果的にアイドルの成長を語らない。栄光を掴んだ時代を模倣する音や映像を作る行為が、過去と同じようにファンを魅了する瞬間を引き寄せる、などという場面が果たして起こり得るのだろうか。むしろ、あたらしいファンも、あの頃は良かったとノスタルジーに浸るファンも、どちらも辟易するのではないか。『サステナブル』は作り手の、AKB48は、アイドルは”こうでなくてはいけない”という姿勢の固辞、つまりジャンルらしさへの誇示に痛ましい誤解が孕むことを証明する作品に仕上がった、と云える。やれることを敢えてやらないのは勇気だが、この作品に関しては現時点で”やれたのにやらなかったこと”の代償はあまりにも大きいと感じる。

アイドルがまったく演技をしない、アイドルに演技の要求がなされていない点からも”原点回帰”が作る一般論的な破壊力抜群のコンセプトに甘えているように映る。例えば、自転車に乗って走る”女生徒”を演じるのが「彼女」でなくてはいけない必然をまったく生まないのは、そこに演劇が存在しないからである。辛うじて、一瞬だけ写る瀧野由美子の笑顔や岡田奈々の演技に日常の再現があり、救われた気持ちになる。
現在(いま)人気のあるメンバーを集めただけで、構成に対する美学が欠落しているのは説明するまでもないが、致命的な瑕は(乃木坂46の『夜明けまで強がらなくてもいい』と響き合ってもいる瑕疵)群像を意識するあまりに、強い主人公を描かなくてはいけない場面でそれを描けていないことだろう。指原莉乃卒業、山口真帆暴行被害事件とグループに転換点を刻み込む出来事が連続し、グループが生まれ変わる動機に不足しない状況が作られたタイミングで予てから”救世主”と謳われる矢作萌夏をセンターポジションに配置したのは、物語の展開としては文句なしであり、矢作萌夏本人にとってもこれ以上ない幸運な境遇が降ってきたわけだが、実際に完成した作品を眺めると、それは現状維持と原点回帰を求めたありきたりな群像でしかないのだから、あくびが出る。AKB48の第一期生、第二期生や乃木坂46の第一期生、第二期生が描いた本物の群像劇とは強い主人公の集合である。矢作萌夏をそのあたらしいピースとして描くチャンスを棒に振ってしまったのは痛恨の極みと云えるだろう。裏を返せば、作り手に英雄譚を書かせる原動力が矢作萌夏というアイドルには内在しなかった、とも云えるかもしれないが。17歳の少女に対する評価や結論としては酷だろうか。しかし、矢作と同じ2002年生まれの小坂菜緒(日向坂46)は3作連続のセンターを決め、作り手に強い主人公を一貫して描かせ続けており、センターポジションを宿命付けられたアイドル固有の空閨をすでに抱え込んでいる点は看過できないだろう。現時点では、その姿形が映し出す鮮烈さにおいて、矢作と小坂では決定的に距離がはなれている、と感じる。
そして、なによりも、まったく同じ時機を見てあたらしい主人公を迎えた乃木坂46の新譜『夜明けまで強がらなくてもいい』と『サステナブル』が皮肉にも同じ瑕疵を作ったのにもかかわらず、楽曲のクオリティそのものは乃木坂46が一定の水準を軽々とクリアするのに対し、AKB48は”ライバル”が到達する水準から著しく乖離する点に現在のグループが抱える苦難の深刻さ、悲鳴を聞く。

歌詞について、

この”タイミング”でファンに”思っていてもらいたいこと”をアイドルに代弁させるというのは、アイドルを演じる少女に対して痛烈といえば聞こえはいいが、なんとも矜恃の欠けた行為である。ファンもアイドルも喪失を通過し成熟しつつある段階で、作り手がそれを許可していない。乃木坂46のブレイクを冷静に俯瞰し、AKBグループの斜陽を傍観するファンと、作り手側の意識のズレはきわめて深刻に映る。アイドルと共に歩み、”大人”になったファンを招待する虚構(フィクション)としては、『サステナブル』の詩的世界はあまりにも幼稚である。それは結局、作り手が現在(いま)のアイドルの日常を写実できていない、関心を作れていないという話題に帰結するのだが。これは、アイドルやファンを子供扱いしていると表現するよりも、作詞家であり、プロデューサーでもある作り手自身が自己超克を試みない現れと云えるだろう。つまり成長共有に対する責任の放棄、裏切りと呼べる。

 

総合評価 38点

人に聴かせる水準に達していない作品

(評価内訳)

楽曲 11点 歌詞 8点

ボーカル 7点 ライブ・映像 5点

情動感染 7点

歌唱メンバー:武藤十夢、倉野尾成美、吉田朱里、横山由依、坂口渚沙、本間日陽、須田亜香里、瀧野由美子、田中美久、石田千穂岡部麟、向井地美音、白間美瑠、村山彩希、岡田奈々矢作萌夏、小栗有以、柏木由紀、松井珠理奈

作詞:秋元康 作曲:井上ヨシマサ 編曲:井上ヨシマサ

評価点数の見方