SKE48 北川綾巴 評価

SKE48

北川綾巴(C)ryoha1009/instagram

「耽美」


舞台の上でパワフルに踊る彼女の姿形に”ズレ”を感じてしまうのは、強烈な内向性を惜しげなく露呈した過去の物語が未だ、鮮度を保っているからだろうか。思弁によって作られた言語を感情として伝えることが出来ずに俯き、背を向ける少女。北川綾巴が持ち込んだ「ポテンシャル」はグループの未来を拓く子供として扱われる。松井玲奈が、宮澤佐江が、匿う。天井を眺める赤ん坊のように、大きな瞳は前を歩く強靭なアイドルたちの日常を見つめる。北川は、シーンの次世代を担うアイドルの一人として、きわめて恵まれた境遇に置かれ、実りある時間を過ごすことになる。特に、兼任先で小嶋真子、岡田奈々、西野未姫、渋谷凪咲、田島芽瑠、朝長美桜といった錚々たるアイドルと席を共にし交錯した経験の恩恵は計り知れない。彼女たちと一度別れ、再集結した日、バスに揺られ目的地へと運ばれて行く時間のなかで、センターに対する矜持、あり方、向き合い方をたどたどしく、しかし言葉を慎重に選択しながら力強い意志をマイフィロソフィーとして語った。少女特有の生硬さが砕け散っていた事実を知る。強烈で持続する意志の源泉が明確に提示された。過去と現在のアイデンティティに隔たりのあるアイドルと成長したが、グループにとって前例のないカウンタックな美(色)に経年変化はない。一色玲奈の「俯き」に過去の自分を重ね、握力のある言葉を使用し励ますなど、未熟ながらも、チームリーダーとしての矜持をみせる。

つまり、アイドルを応援する醍醐味とは、やはり、成長(物語)の共有である。とくに、現代のアイドルシーンにおいては、アイドルが発信する情報の共有作業は、ファンにとってもアイドルにとっても慣習化された行為であり、「日常」と表現できる。「成長共有」は現代アイドルのメインコンテンツと呼べるだろう(ライブ空間は非日常のコンテンツと云える)。しかし、その成長共有というコンテンツを至高のもの(あるいは、奇跡)とするとき、そこに、ある種の危険性を孕む。多様な人間と交錯し成熟する過程で、アイドルが自身のアイデンティティを喪失して行く光景に耐える覚悟の要求。自我を獲得したアイドルは、より多くのファンと遭遇するために、普遍的に、普遍的思考に陥る。その思考は、それまで、惜しげなく提供してきた「人間」の替わりに、形はさまざま、それぞれと異なるが、「美」の提供をはじめさせる。北川綾巴も、もちろん、例外ではなかった。ぐらっとするような美の提供。美への陶酔。

奇跡は間に合わなかった。かつて、カメラの前で立ち竦み、俯いてばかりだった内向的な少女。北川綾巴を少しのあいだだけ想像力の外側に置いた後、忘れ物に気付いて引き返すように彼女の作り上げた虚構の中に戻ると、ピュアと直向きさを一生懸命に抱える少女の姿は消えていた。生来の資質がささやかに保存されることが、如何に奇跡なのか思い知らされる。そこに屹立するアイドルは、自らすすんで”美”の提供をしていた。灰色の、打ちっぱなしコンクリートを背景にファッションショーをくり広げていた。それは、ある意味では、正当進化と言えるのかもしれない。グループが抱えるイデオロギーを全身に浴びて、その筐体の未来を担う存在としての使命感に対する能動的な自覚が”美の追求”へと転化するのは、当然の成り行きと云えるかもしれない。世代交代という意味で”センター”に立つことと、共存共栄の為(あるいは、可能性を保存する為)の”センター”には、どれだけの隔絶があるのだろうか。そのような不分明な境界線を、階段を一段飛ばしで駆け上がる時のように踏み越える強さを示す反動性へのアンチ・テーゼが、北川綾巴にとっては”耽美”だったのだろう。「Parting shot」においては、美への追求、耽美主義という姿勢に対するひとつの回答を示すことに成功する。過去と現在のアイデンティティが乖離するアイドルが映像という仮構の中で存在理由を満たしていくその光景は、グループの歴史に描かれたことのない光景であった。しかし、その映像の中に飾られた薔薇は「棘」が丁寧に削ぎ落とされている。庭の隅に転がったままの、空気が抜けてやわらかくなったバスケットボールみたいに、たいせつな何かが損なわれている。

「これからもっと悔しい事とか辛い事とか納得いかない事がたくさんあると思うけど、でも、それでもみんな今の気持ちのまま、今のピュアな気持ちのまま良い意味で大人にならないで、そのままの純粋なきみたちでいてください」

(乃木坂ってどこ「笑顔、そして涙の岩瀬佑美子卒業式」)

乃木坂46・岩瀬佑美子の卒業スピーチである。現代アイドルのあるべき姿を捉えたメッセージである。月日が経ちどれだけのメンバーがこの素晴らしい科白を心に留めて活動しているのか、わからない。だが、今日の乃木坂46の飛躍のファクターとして、岩瀬佑美子のイデオロギーがたしかに、そこに生きているのではないかと、どうしても思いを馳せてしまうのだ。


総合評価 67点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 16点 ライブ表現 14点

演劇表現 13点 バラエティ 13点

情動感染 11点

SKE48 活動期間2014年~

評価更新履歴 2018/7/4  演劇表現 10→13

評価点数の見方