SKE48 神門沙樹 評判記

「想像力の欠如」
神門沙樹、平成8年生、SKE48のドラフト1期生。
僕はそのとき、あの夏の午後にお見舞いに持っていったチョコレートの箱のことを考えていた。彼女が嬉しそうに箱のふたを開けたとき、その1ダースの小さなチョコレートは見る影もなく溶けて、しきりの紙や箱のふたにべっとりとくっついてしまっていた。僕と友だちは病院に来る途中、海岸にバイクを停めた。そして二人で砂浜に寝ころんでいろんな話をした。そのあいだ、僕らはチョコレートの箱を、激しい八月の日差しの下に出しっぱなしにしていた。そしてその菓子は、僕らの不注意さと傲慢さによって損なわれ、かたちを崩し、失われていった。僕らはそのことについて何かを感じなくてはならなかったはずだ。誰でもいい。誰かが少しでも意味のあることを言わなくてはならなかったはずだ。でもその午後、僕らは何も感じることもなく、つまらない冗談を言いあってそのまま別れただけだった。
村上春樹「めくらやなぎと、眠る女」
現代日本人の、現在のアイドルシーンに没頭する多くのファンの特徴のひとつとして、無関心・無感動、を挙げることができるだろうか。他者の日常、あるいは自分の日常にすら機微を想わないその生き方を支える原動力に、想像力の欠如、を見出すべきだろうか。想像力、これは他者との交錯、対峙、闘争、つまり”生きること”に際し、一体どれだけ要求される資質と見るべきか。この現代でアイドルを演じることになった少女たちを取り囲む情報群に対し、また彼女たちから発せられる日常の些細な表情としての情報に対し、その解釈に対し、ファンは自身の乏しい想像力にどこまで責任を負うべきだろうか、という、この、「アイドル」というコンテンツのあり方を、向き合い方と付き合い方を真剣に考える、自問自答を繰り返し行うことのできる成熟したアイドルファンにとって見過ごすことのけしてできないテーマを、神門沙樹はのこしてくれた。
総合評価 61点
アイドルとして活力を与える人物
(評価内訳)
ビジュアル 14点 ライブ表現 13点
演劇表現 10点 バラエティ 9点
情動感染 15点
SKE48 活動期間 2013年~2015年