欅坂46 織田奈那 評判記
「喜劇役者＝ピエロ」
織田奈那、平成10年、欅坂46の第一期生。
アイドルの王道的イメージ、たとえばステージの上を華やかに舞い、歌を唄う、観客をとりこにするアイドル、という古典的イメージから自己のつくりだすアイドルが日々遠ざかって行くことに悩んだ少女であり、またそうした屈託がアイドルの物語化に役立てられてしまった登場人物でもある。
ある喜劇の一場面で、女として見てないじゃん、と涙した。アイドルとして認められてはいるけれど、それは女性的魅力の横溢した、異性をとりこにする存在としてのアイドルではなく、テレビのバラエティ番組などで活躍するお笑いタレントに近いイメージをもったアイドルだという事態に直面し、動揺する。そうした少女は、多様性に溢れ、また、多様性を求める今日のアイドルシーンでは、けしてめずらしい存在ではなくなった。
自分から眺めた自分＝アイドルが、他者がイメージする「織田奈那」とまったく異なっている。自分はおそらくこれこれこういう人間だろうという確信のなかで生きてきて、またアイドルになったことでその確信に理想を重ねつつアイドルを育もうとした矢先、その「理想」から大きくかけ離れたイメージ・役割を求められてしまうわけだから、ある種の覚悟と、屈託を少女たちは抱え込むことになる。織田の場合、皮肉にも、そうした屈託をカメラの前で大胆に描き出してしまったことで、それが面白可笑しく喜劇に編集されたことで、アイドルのイメージがより喜劇役者然としたものへと、固まってしまった。
喜劇役者＝ピエロの宿命か、高山一実や能條愛未等と同様に、この人もまた仲間のアイドルに愛着される人物であり、本心をだれにも理解されない、だれにも本音を打ち明けることができない、という状況のなかで、他のアイドルの精神的寄す処にされてしまうことの孤独感、寂寥には、なかなか興味深いものがある。
総合評価 56点
問題なくアイドルと呼べる人物
（評価内訳）
ビジュアル 7点 ライブ表現 13点
演劇表現 10点 バラエティ 13点
情動感染 13点
欅坂46 活動期間 2015年～2020年
