アイドルの可能性を考える 第一回 乃木坂46 編

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「乃木坂46の次世代アイドルの可能性を考える」

メンバー
楠木:批評家。趣味で「アイドルの値打ち」を執筆中。
OLE:フリーライター。自他ともに認めるアイドル通。
:音楽雑誌の編集者。
横森:カメラマン。門脇実優菜推し。

楠木:普段みなさんとこうやって集まって映画や小説、音楽から演劇、アイドルまで、幅広く意見交換していますが、この場でのやりとりをブログの記事にしたら面白いのではないか、と思いつきました。ただ、いきなりアイドルについて真剣に語らえと言われても困ると思うので今回はそれらしいテーマを用意しました。
テーマは「乃木坂46の次世代アイドルの可能性」とします。具体的には、遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香、筒井あやめの4名について論じていこうと考えています。もちろん、この4名以外のアイドルも話題に挙がってくるはずですが。ではよろしくお願いします。

「賀喜遥香はマスターピース」

OLE:この4人の中でなら断然賀喜遥香かな。売れるでしょこの子は。白石麻衣とか齋藤飛鳥みたいに売れるよきっと。顔が良いからね。
:賀喜遥香さんって、似ている芸能人が一人もいない。それって強みになりませんか。
横森:戸田恵梨香に似てる。
:似てるかな(笑)。似ていないとおもう。
OLE:イメージはあるね。というかルックスがいい子ってみんなどこかしら似通ったところあるから。戸田恵梨香に似てるって声が挙がるのもルックスが良いからだよ。演技もできるし歌も上手い。「可能性」ってことなら一番可能性あるよ。あとはダンスだな。
横森:ダンス下手なの?
OLE:下手ではない。でも上手くもないかな。
横森:『Isee…』のミュージックビデオをみる限りダンスより表情が硬い気がする。一番大事なところで緊張しちゃってる。
OLE:その辺はもう克服してるよ。
楠木:このひとの売りって「未完成」ってところでしょう。5期生のオーディションの謳い文句に「未完成」って出てきたけど、そこに賀喜遥香がピタッと当てはまっている。というよりも、むしろ賀喜遥香の存在が作り手の意識の中で大きくなりすぎちゃって、それでおなじような子を強く過剰に求めはじめたようにみえる。
横森:ダンスは下手なほうが良いってこと?
楠木:そこまではっきりとは言わないけど(笑)。ブーストがかかっているのはたしかでしょう。天才より凡庸である方が絶対に良い。このひとを軸に考える場合は。
OLE:「未完成」をアイドルに求めるのはもうクリシェになりつつある。でも彼女の場合クリシェにならず逆に目新しいんだよね。非常に高い可能性を感じる。こういうアイドルが現役でいるなら「未完成」っていう見出しを付けてもダサくならない。
:そういう形で眺めると生駒里奈さんに似ていませんか。凡庸でしょ彼女は。「蓋然」ではなくて「仮定」によりかかっている。~になるだろうと未来をはかるのではなくて、~になるかもしれない、という「仮定」の方が強い。可能性と言っても光りだけじゃなく暗さもあるのかなと。
楠木:回帰しているんですよ。4期は次の1期なので。3期で大園桃子が加入して平均線からグンと乖離したでしょう。今度はそこから平均線へと回帰した。だから4期はオーソドックスそのものに見える。未完成品として賀喜遥香はやっぱりマスターピースなんですよ。

「遠藤さくらの演技について」

楠木:他の3名(遠藤さくら、掛橋沙耶香、筒井あやめ)についてはどうですか。
:僕は演技についてはまったくの門外漢です。でもかえってそのおかげなのか、前評判通り、遠藤さくらさんには演技の才能を感じました。それも舞台ではなくてテレビドラマや映画といった映像演技に対してです。スマートですよね演技が。棒になりえないというか。
楠木:たぶん現役アイドルのなかで一番才能があるんじゃないかな。役を演じることでほんとうの自分を知っていく発見していくっていう雰囲気がもうすでにある。まあこれは見せ方がうまいだけかもしれないけど。
OLE:演技といえば生田絵梨花が今一番って言われてるでしょ。でも生田絵梨花よりも全然上手い。正直、生田絵梨花が天才だとは考えられない。演技がきわめて類型的だから。
楠木:僕も天才だとは思わない。でも間違いなく本物でしょう。生田絵梨花がすごいのは天才というキャラ・存在を演じてしまえるところですよ。説得力がある。天才ではない人間が天才キャラを演じられるっていうのは矛盾しているかもしれない。けれどそういう矛盾がユーモアたっぷりに見える理由なんだろうね。自分が天才ではないって理解していて、かつ大衆が求める偶像を熟知しているから天才を演じられるんだとおもう。だからアイドルとしては最高到達点だよね。
横森:舞台・ミュージカルを主戦場とするあたりやっぱり頭が良いんだろうね。戦略的だよこのアイドルは。自分が一番輝く瞬間を知っている。
OLE:演技の才能なら早川聖来を推したいな。
:早川さんが出演しているドラマ一通り鑑賞しましたが、彼女の演技こそ古臭くないですか?
楠木:演技の才能はあるんだろうけど、その才能をアイドルとしての人気を獲得するために積極的に消費している(笑)。バーチャルから抜け出ないよねこのひと。
:情報を演じているだけに見えるんですよね彼女。
OLE:でもそれがエンターテイメントとして正しい姿勢でしょ。
楠木:そうなんですけど、僕は彼女をはじめて見たときにアンダーグラウンドを感じたわけです。グループアイドルという枠組みにおけるマルチカルチュラルを引き受けるような登場人物に見えたわけです。しかしそれがここまでエンターテイメントにぐいぐい間合いをつめてくるとはおもわなかった……。
:遠藤さくらの演技はグループのノウハウの蓄積があってこそのものかもしれません。でもそれに乗れちゃうっていうのはやっぱり才能と表現すべきだとおもう。
楠木:戦略的な話抜きにしても間違いなく才能ありますよ。というか、このレベルの才能をきちんと見出して露出させる作り手がアイドルシーンに存在しているって点に驚く。山田杏奈とかそういうレベルの女優ですよ、遠藤さくらって。才能をもった人間が大量に押し寄せる状況にあるってことなんだろうね今のアイドルシーンって。いよいよ作り手に眼力が求められてる。

「社会派アイドル・掛橋沙耶香」

楠木:作り手の眼力を問うとすれば、掛橋沙耶香は完全に失敗している。
OLE:若月佑美だよこの子。次選抜に入らなかったら色々と危うい。
:若月佑美というよりも村山彩希に似ていませんか?運営陣が考える戦略に対して反抗的なんでしょう?
横森:学業優先ってだけでょ(笑)、村山彩希とはステージが違う。
:運営陣の図らいとは無関係に人気がどんどん出てくるっていう意味です。
OLE:いやいや、10年スパンで見てるんだよ。運営の企図する通りの展開なんだよきっとこれ。
楠木:現実が幻想に完全に勝利しているのでアイドルから純粋さが奪われてる。
横森:生涯賃金でアイドルを考えている。逞しいじゃない。社会派だよ。

「ミステリアスな筒井あやめ」

OLE:筒井あやめはミステリアスだね。ネガティブなイメージは持ってない。でもポジティブな意見も持てない。最年少にしては随分と大人びているよね、っていう紋切り型な感想しか出てこない。
:楠木さんがよく「素顔」という表現を使うけれど、素顔から一番遠い場所に立っているように感じる。
楠木:若い子のほうが素顔は見えないですよ。だって自分の「素顔」をまだまだ知らないわけでしょう。隠しようがない。隠せないものは見せようがない。可能性はどうですか?
OLE:可能性は感じるね。ダンスが上手くてルックスも良いってアイドルはめずらしい。でも遠藤さくら、賀喜遥香と比較すると心を揺さぶるものがない。
横森:カメラを見つめる時の眼がどこか虚ろだよね。目が合っているのに合っていないみたいな。確かにミステリアスかも。
楠木:これは「ミステリアス」に換言するわけじゃないけど、僕が子供の頃に通っていた小学校は今はもう廃校になっていて、文字通り廃墟になっている。でもまだ取り壊されていない。でたまに実家に帰った際に散歩しながら校舎横にある体育館とかプールとか覗いてみるわけ。でも不思議と郷愁は感じないんだよね。ところが隣町にある縁もゆかりもない小学校のプールの前を通り過ぎる時は言いようのない郷愁を感じる。そういう不思議さ、ノスタルジックへの求心力が筒井あやめにはあるんじゃないかな。しかもこのひとは名前が良い。あやめ=希望ですよ。将来が楽しみだな。
:清宮レイとペアにして売り出してますよね。星野みなみと齋藤飛鳥みたいな。あと佐々木琴子と鈴木絢音とか。運営陣に大事にされているのはひしひしと伝わってくる。
OLE:清宮レイもミステリアスだからな。相通じるものがあるのかも。

「どうなる金川紗耶」

楠木:表題の4名から外れますが金川紗耶はどうですか?僕はこのひとをすごく推している。すべて高水準にあるとおもう。才能ありますよ。
横森:スキャンダルが出たばっかり。
OLE:スキャンダルはまあどうでもいいけど。上の4人と比較すると一段も二段も落ちる。乃木坂ってそういう意味じゃちゃんと売れるべき子が売れてるんだよね。中村麗乃くらいじゃないの立ち位置が狂ってるのは(笑)。
:ちょうど中村麗乃の名前が挙がりましたが、金川さんは中村麗乃に似ているとおもう。
楠木:それはあるかもしれない。
:ルックスも似ているし、スタイルとか、あとダンスも上手いらしい。
OLE:ダンスは素晴らしいね。
横森:高級感があるね。佇まいに。でもこれ見せかけの高級感だ。
楠木:それが泡沫に映るんでしょう。ちいさくまとまらないで欲しいな。

「高山一実は小説家になれるのか」

OLE:これはちょっと私たちの職業的な話題に踏み込んでしまうが、アイドルの卒業後=可能性という意味で、高山一実は小説家になれるのかどうか。
:みなさん『トラペジウム』は読みましたか?僕は読んでいません……。
横森:読んだら負けだと思っている(笑)。
OLE:齋藤飛鳥と長濱ねるが褒めてた。
楠木:彼女が小説家になれるのかどうかを論じるだけなら読む必要はないですよ。まあ僕は一応読みましたが。
OLE:まあもっと本を読んだほうが良いよね。彼女。
楠木:そんなことないですよ。本なんか読む必要ないですよ。芥川賞とか獲りたいならお受験的な攻略方法として審査員の作品くらいは読む必要があるかもしれないけど。彼女がこれから小説家を名乗ってそれでご飯を食っていくつもりなら、一番求められるのは書き続けるちからですよ。
OLEそれが一番むずかしいよ(笑)。
楠木:量を書くのはむずかしくないですよ。垂れ流しの文章で構わないならまったくむずかしくない。天才=文量って考えはバルザックから来ているんだとおもう。全盛期のバルザックは毎日、最低でも原稿用紙80枚分書くっていう生活を5年くらい続けている。しかも作品のほぼすべてが文学史に残るレベルの質を保っている。たしかに、これはもう天才と呼ぶしかない。でもそうじゃなくて、とにかく稚拙でも粗雑でも構わないから文章を書け、一年に一編の小説を上梓しろってことなら凡庸な人間にもできるはずだよ。ほとんどの作家がこれできないのは、妥協しないからだろうね。才能ないくせに名作を書こうとしちゃう。自分に才能がないことを受けれちゃったら書けなくなると思い込んでるんだろうね。なんでもいいから書いちゃえっていう構えを作れない。小説とはまた話が変わるけれど秋元康はこういうところクリアしている気がする。まあ本人はこだわりを持っているつもりなんだろうけれど。お金を稼ぐためにどんどん書くでしょ秋元康は。そういう意味じゃ高山一実が小説家として食っていくためのヒントは身近に落ちていると言える。質なんてどうでもいい。とにかく書くこと。どうせファンが買うんだから。サイン会とか講演会とかさ、やるでしょどうせ。その分だけで食っていけるよ。芥川賞・直木賞作家よりよっぽど可能性あるよ、高山一実は。あと口に出すことは大事だねやっぱり。このひと意外と度胸があるのかもな。才能はまだわからないけど。
OLE売れるなら才能があるとも言えるよ。
横森:帯を齋藤飛鳥に書いてもらえばいい。

2021/08/01  楠木かなえ

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