HKT48 指原莉乃評判記

「ピンチをチャンスに変える、幸運のアイドル」

まわりを見れば大勢の
可愛いコたちがいるんだもん
地味な花は気づいてくれない

秋元康/恋するフォーチュンクッキー

指原莉乃、平成4年生、AKB48の第五期生であり、HKT48へ完全移籍したメンバーの一人。HKT48の6代目センター、AKB48の9代目センター。HKT48の劇場支配人(STU48兼任時は同グループの支配人にも就任した)。
大変な成功者である。これほどまでに大衆に歓呼されたアイドルは、後にも先にも、指原莉乃だけだろう。”平成”を代表するアイドルだと、極褒めすべき人物である。『恋するフォーチュンクッキー』に活写された指原の横顔は平成の時代においてどのような少女がアイドルを志し、大衆にアイドルと呼ばれたのかを、端的に教えている。
ピンチをチャンスに変える、幸運の女神に愛された、言葉の才能に恵まれた人であるという点が、その成功の核心に挙げられるだろうか。アイドルの花形とも言うべき資質、つまりビジュアルや歌、ダンスにおいては、正直、才能に乏しい。けれどもそれらを補って余りある多様性を備え持つ点が、つまり、ある特定の分野において突出した才能を有してさえいればアイドルを名乗れるのだという希望を広げた点が、そのままこの人の個性となっている。とりわけ、どのような醜態、どのような自家撞着を描こうとも最終的にはそれをアイドルとしての人気につなげてしまう点、またそうした機智の宿命を指原が持つことを、他のだれよりもはやく自分が見出したのだと、ファンや作り手に唱えさせる点などに、この人の才能、多様性という器の大きさがある。
その代償とも言うべきか、「アイドル」ではなく、お笑いタレントだとするイメージのほうが遥かに大きい。たとえば、乃木坂46の面々を従え『何度目の青空か？』をカヴァーした際に、ステージ上で歌い踊り出す指原に向けたファンの最初の歓声が楽曲の世界観をぶち壊しにする”笑い声”であったことは、指原莉乃というアイドルの境地をよくあらわした出来事であったように思う。ステージの上ではアイドルになり得ないというその虚しさ、孤独感は、自分がまだ正統的なアイドルであった頃の、つまりAKB48の一員であった頃の眩しさに手を伸ばそうとする、ノスタルジーへの憧憬を映し出してもいる。私などは、そうした視線にこそ、この人の魅力があると思うのだが。

総合評価　68点

アイドルとして活力を与える人物

（評価内訳）

ビジュアル　12点　ライブ表現　12点

演劇表現　8点　バラエティ　20点

情動感染　16点

AKB48～HKT48(STU48)　活動期間　2007年～2019年