AKB48 木﨑ゆりあ 評価

(C)木﨑ゆりあ 2nd写真集「Stagedoor」/徳間書店

「鳴く蝋燭」

蝋燭の炎のように暗闇にひかりを灯し、蝋燭の炎に息を吹きかけて消すようにアイドルを演じることに終止符を打った。透徹したビジュアル、剣呑で拒絶感のある演劇、必然性の無い交錯と連なりに悶える踊り。木﨑ゆりあは、デビューした段階ですでに高い次元に完成されたアイドルであり、AKBグループにおいてトップクラスの実力者の持ち主である。純潔を抱え、鉄人のような立ち居振る舞いを描く。少女の体のなかには何か硬い塊が蠢いているのではないか、とたぢろぐ。蒼然とした、しかし芯の強いアイドルを作った。木﨑ゆりあのきわめて高い処女性から発散する武骨な荒々しさと自発的能動性は、斜陽の胎動を伝えるグループの現状を打開するための新しい規律として機能するだろう、とファンに期待を抱かせた。「木﨑ゆりあ」というアイドルは身勝手な信頼を妄執させるひとつの偶像であった。

ある旅行番組で「選挙で選抜(16位以内)に入らなかったら辞める」という趣旨の発言をしていたと記憶しているが、これを観たとき、フィクションを作ることへの意識の高さに感服すると同時に、《ずいぶん自分を追い込むものだな》、と感じた。ストイックなキャラクターを構成する人物のマニフェストとは、観者に有言実行を過剰に迫られ自縄自縛に陥ってしまうことが多い。木﨑ゆりあのようなフェーズに達したアイドルは隔たりや孤絶によって闘争が矛先を見失い、自傷をする場面が多い。そして、フラジャイルやヴァルネラブルを獲得し闘争そのものが萎れてしまう。結果、その年に木﨑ゆりあは選抜圏内にランクインできなかった。が、卒業したのはその2年後であるから、彼女のアイドルとしての物語が冗長と捉えられてしまうのは仕方がないのかもしれない。自身のイデオロギーを若手アイドルに継承させるために設けた期間だと想像もできるが、どうしても「縋り付いている」というイメージがしがみ付く。実際にその期間のアイドル活動においては、とくに目覚ましい活躍をした、という訳でもなく、むしろ人気は右肩下がりであり、それに歯止めが利かない状態であった。それでも20才の年の「結果」で卒業を判断したのは懸命であり、蝋燭の火をフッと潔く消してしまう決断力、妥協点のつくりかたはアイドルとしての生き方に徹底している、と評価できるだろう。また、グループの移籍に関しても、ファンへ様々な感情が交錯する物語、つまりアナザーストーリー、(もし、木﨑ゆりあがAKB48に移籍しなかったらという偽史)夢想を提供できた点は豊穣を獲得する証しであり、「功績」と呼べるだろう。

 

総合評価 74点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 15点

演劇表現 15点 バラエティ 14点

情動感染 15点

SKE48、AKB48 活動期間 2009年~2017年

2019/06/26  加筆しました

評価点数の見方

AKB48, SKE48