AKB48 石黒莉美 評判記

AKB48

(C)AKB48

「今終わった」

石黒莉美、平成3年生、AKB48の第七期生。
文字どおり、顔が見えない。定かなのは名前と生年月日、出身地くらいなもので、アイドルとしての物語は1行も記されていない。顔が影になっていて見えない、でもなく、アイドルの輪郭がなぞれない、でもなく、アイドルそのものが作られていない。2008年の12月にオーディションに合格し翌2009年の1月に早くもアイドルから卒業(卒業という表現は適切ではないかもしれないが)しているわけだから当然と云えば当然なのだが。とはいえ、石黒莉美もAKB48の難関オーディションを突破した一人にかわりなく(石黒の同期である7期には佐藤すみれ、小森美果、前田亜美と個性的なメンバーが揃っている)、その少女の顔写真が公式サイトに一度も掲載されていない、記録されていない、というのは、グループの歴史を作る物語るという点において作り手の意識の低さを目の当たりにし、小言を云いたくなる。研究生オーディションを通過しただけではグループの一員として認めない、ということなのだろうが、それとこれとは別の話である。歴史を作る気があるならば「記録」を残さなければ始まらない。それとも私が浅薄なだけなのか。いずれにせよこのアイドルは「公」の情報がほとんど残されていない。ほとんど、と書いたのは、週刊誌の付録など、細部まで探れば、あるにはある、らしい。
「公」がダメならば「私」に頼るしかない。「私」ならば、それなりに彼女の輪郭を埋めることができる。
どうやらこのひとは、明け透けな性格の持ち主であったようで、あるいは夢に絶望する若者特有の反抗か、はたまた若気の至りか、自身のブログ上で、ファンからの質問に何でもかんでも安易に応答してしまう悪癖を披露している。アイドルによる「暴露」に対し一部のファンがたしかにさんざめいている。この「暴露」が後に8期の粛清につながっていくその胎動であったのだとすれば……。
石黒莉美の、肝心のアイドルとしての資質については、セレクション審査を前にした敗北を見ればもはや説明は不要におもうが、彼女のデビューまでの道のりを眺めると、7期生募集オーディション以前に、6期生募集オーディションに参加している。AKB48の6期とは、これはもう不作の「期」であり、矢継ぎ早にオーディションを開催した弊害か、グループがはやくも人材難に直面している(6期や7期よりも、4期5期あたりのファン情報のほうが潤沢であるのも、グループの物語に参入する少女の多さにファンが辟易しはじめたから、と読むことができるかもしれない)。石黒はその6期すら通らなかったわけだから、あまり期待できそうにない。事実、6期生募集オーディションに落選後、後日開催されたオーディションで合格したアイドル(上遠野瑞穂、鈴木紫帆里、鈴木まりや、中村麻里子、松井咲子)のいずれもが小ぶりである。卒業後、「AKB入って、自分の目指してるところは芸能界じゃないって気付いた*1」と、投げやりに語っているように、文芸の世界で通用する才能の持ち主ではなかったのだろう。ただ、彼女の”日記”には、芸能界=きらびやかな夢に対するありとあらゆる”なごり”が込められており、また同時に、青空を見上げるような清々しさ、リアリティがありなかなか儚い。

契約の解約 

今終わった

オーディションに受かるのもあっと言う間

終わるのもあっと言う間でした

さぁーて帰ろ

気ままにブログ / 石黒莉美

 

総合評価 36点

アイドルの水準に達していない人物

(評価内訳)

ビジュアル 5点 ライブ表現 5点

演劇表現 5点 バラエティ 9点

情動感染 12点

AKB48 活動期間 2008年~2009年

引用:*1 れみ姉ぇの気ままにブログ/石黒莉美