STU48 榊美優 評判記
「CUCA」
榊美優、平成14年生、STU48の第一期生。
プロフィール写真を眺めた際の印象と、ステージの上で躍るアイドルを眺めた際の印象が大きく異なる。あるいはこれは多くのアイドルに言えることかもしれないが。榊美優は特にその差異が顕著であると感じる。もしかするとそれが彼女のアイドルとしての人気に影響したのかもしれない。
この人は日常よりもステージの上つまり非日常に立ったときの方が活き活きとして見える。STUのなかでアイドルを育んだ少女特有の、力強い、粘り強い踊りを描く。
とはいえ、日常の場面にも引かれるものがたしかにある。一見すると、淡々としていて、常にテンションをある一定の閾に抑え、固まりきって融かすことのできない屈託を抱えているように見えるが、なかなかどうして、アイドルとしての行動力に並ではない熱誠をもった人で、動画配信サイトを活用し日々ファンの前でアイドルの素顔を描き出している。たとえば、電車に揺られ旅をする動画。旅行という、言わば非日常においても彼女の動画＝旅行風景のなかでは一貫して特別なイベントが起きない。ほとんど、抑揚がない。ここがおもしろい点で、この後なにかが起こるのではないか、という予感・期待が最後まで実を結ばずに、特になにも起こらないまま物語が終わってしまうところに、演者の日常＝素顔を垣間見るのだとおもう。
素顔、これは要するにある種のリアリティであるから、榊美優はリアリティにあふれたアイドルだ、と云えるかもしれない。たとえば、博物館を訪れ、そこに飾られた潜水艦のなかを興味なさそうにトボトボと探索する彼女の後ろ姿はリアリティを強く醸し出している。アイドルの興味があること、ではなく、アイドルが興味を示せないもの、を教えられる。観覧後、レストランでデザートを食べる際にはこれまでに見せたことのない笑顔をこぼしたり、その点もまたファンにアイドルの素顔を伝えている。
感情表現ゆたかな人、とはとても呼べないが、けれど多くのアイドルがごくまれにしかこぼすことのできない日常の素顔、アイドルが嬉しそうに笑うとこちらまで嬉しくなって笑みをこぼしてしまうような、そんな瞬間を恒常的に提示していると考えれば、星の数ほどいるグループアイドルの一人と処理してしまうにはもったいない、とおもわせるだけの魅力、可能性を秘めた登場人物に見える。
しかるにブレークスルーを一度も起こせないままアイドルの扉を閉じてしまったが、ビジュアル、ライブ表現力、多様性と申し分ない実力の持ち主であることに変わりはなく、その実力に反しておもうように戦果を得ることができなかった点、自身が思い描いてきたものと現実が大きくズレていた、卒業後は自分の満足できる人生を歩みたい、と卒業に際し語ったその反動もまたリアリティにあふれている。
総合評価 53点
問題なくアイドルと呼べる人物
（評価内訳）
ビジュアル 9点 ライブ表現 13点
演劇表現 7点 バラエティ 12点
情動感染 12点
STU48 活動期間 2017年～2021年
2023/04/04 編集しました(初出 2020/08/09)