乃木坂46 空扉 評価

乃木坂46, 楽曲

@mimiko_7499がシェアした投稿

 

「真っ青な扉があるはずさ」

 

まず、タイトルが良い。小説と同様に歌にとってもタイトルとは重要な要素になる。この楽曲は「空扉」というタイトルがつくられた時点で、一定の成功を約束された作品と云える。なによりも、作詞家によって書かれた「詞」が、安易で直截的な表現に逃げておらず、アイドルの虚構を躍動的に描いている点に、表現者としての拘り、資質を感じる。もちろん、『海、渡り鳥、扉、冒険、勇気、別の世界』と、空想の世界(ファンタジー)を想起させるワードを組み込んでおり、楽曲のテーマを放棄せずにしっかりと描写できている。存在理由としてファンが抱くであろう期待感への応答を看過していない。

この楽曲(歌詞)は、私たちが暮らす現実(こちら側の世界)から、別の空想の世界(夢や希望)への扉を開いて飛び立つという物語ではない。この楽曲(歌詞)で描かれた世界とは、アイドルが作り上げた虚構(もうひとつの別の世界)である。
「僕」とは、アイドルが作り上げた、虚構(もうひとつの別の世界)の中で暮らすアイドル自身である。アイドルの意識のなかで、もうひとつの別の世界が創造され、その箱庭の世界で起きた、もうひとつの物語である。
その世界で生まれ育った「僕」は、子供の頃から空の向こう側(私たちが暮らす現実の世界)を意識している。何故だろうか?それは、現実側のアイドルの個人的体験が無意識に「僕」の潜在意識に働きかけ、「僕」の内に宿命的なものとして「胎動」しているからだろう。”だから”「僕」はそこから冒険(脱出)しようとする。もしかすると、その世界では、「空扉」に触れることは禁忌(掟破り)とされているのかもしれない。それでも「僕」は現実の世界へ旅立とうとする。そして、虚構と現実が爻わる。
虚構の世界と現実の世界の交錯はアイドルのアイデンティティの確立過程に外ならない。空想の世界で生まれた「僕」が成長し、「空扉」に手を掛ける…。それはアイドルの自我同一性の獲得を意味する。
私たちファンは、このようなアイドルの虚構の中で暮らす「僕」の存在を、ある種のオブセッションとして認識する必要があるのかもしれない。「僕」の背中を押してあげる勇気と覚悟が求められているのだろう。

映像作品について。
楽曲のタイトルと歌詞。このふたつから予感させる映像作品への期待感は前例がないほど高いものになってしまった。そして、残念ながら、その期待感を満たす「映像」はファンに贈られなかった。
まず、事情はわからないが(たとえ、同情されるような事情があったとしても)楽曲のテーマ、歌詞の描写と映像の世界がまったく噛み合っていない。合致せずに、交錯せずに、並行走行をしているとでも云えばよいだろうか。もちろん、メタファーという都合の良い言い訳は通用しない。つくり手の熱量は伝わってくるのだが、アイドルの物語を「断片」として演出するというのは、もう見飽きた、陳腐な手法である。典型的な、安易な自己模倣と斬り捨ててしまいたい、そんな気分にさせる映像の繰り返しである。
評価できる点があるとすれば、「メンバーの紹介」という要素のなかに皮肉を込めたところだろうか。それが、意図したものなのか、身勝手な独りよがりな情熱から付与されたものなのかは知らないが、結果として映像の中にアイドルの作品としては珍しく、演じているアイドルに対する皮肉が込められている。もしも、これを仕掛けとして配置したのなら、それはアイロニーと呼べる水準に達しているだろうと想う。このつくり手は私たち批評家の分野に足を踏み入れている、とも云える。アイドルをただ褒めそやして自己満足のオモチャにして弄っているだけの未成熟なアイドルファンへのシニックな仕掛けとして、意図的に配置したのなら称賛されるべきだろう。皮肉とは対象者がそれに気付いてはじめて皮肉として機能するわけだが、果たしてどれだけのファンがこの映像作品に(意図的にしろ、偶発的にしろ)ちりばめられたクリティークに気が付くだろうか。愉しみである。
アイドルの演技については、生田絵梨花が舞台のみならず、映像作品においても突出した演技力をもつことを証明し、他を圧倒する存在感を発揮している。

 

総合評価 81点

近代アイドル史に名を残す作品

(評価内訳)

楽曲 18点 歌詞 19点

ボーカル 15点 ライブ・映像 13点

情動感染 16点

 

評価更新履歴
2018/10/06 リライト
引用:見出し 乃木坂46 空扉

 

歌唱メンバー:梅澤美波、高山一実、斉藤優里、鈴木絢音星野みなみ、新内眞衣井上小百合秋元真夏衛藤美彩西野七瀬白石麻衣松村沙友理生田絵梨花大園桃子与田祐希梅澤美波、山下美月、岩本蓮加

作詞: 秋元康 作曲:FURUTA/Dr.Lilcom 編曲:Dr.Lilcom

収録トラック:ジコチューで行こう! 自分じゃない感じ あんなに好きだったのに… 心のモノローグ 三角の空き地 空扉 地球が丸いなら

評価点数の見方