AKB48 誰のことを一番 愛してる? 評価

AKB48, 楽曲

(C)誰のことを一番 愛してる?ミュージックビデオ

「想像上のジェラシーの鳥」

歌詞、楽曲、ライブパフォーマンスについて、

作詞家自身の思想を、詩的世界を通じてアイドルに代弁させる(復唱させる)という行為は、無邪気ではなく俗悪と呼べるだろうか。この、『誰のことを一番 愛してる?』の歌詞について問うならば、それは俗悪と名づけられるだろう。作詞家・秋元康を絶え間なく囲繞する、アイドルファンから贈られる、クリティークと呼ぶにはあまりにも稚拙な「揶揄」に対するあてこすりだと、親近者に覚られる可能性を意識的に看過することに成功したのか。あるいは、剔抉を迎え撃とうとしているのか。覚悟の提示は、同時に、他者へ覚悟の要求を強いる。「私のこころを独り占めするにはどうしたらよいか」とアイドルたちに嘲笑いかける。”ニ番目以下は他人とかわらない”とすら云う。『未来の闇が深くなる(*1)』という詩こそ、氏がアイドルに突きつけた覚悟の要求である。一番になりたければ、まごころの奥底にある”生ぬるい欲”をトレーにのせて提出しろ、と云っている。

生き餌を必要とするアマガエル。餌としてコオロギを与えていると、アマガエルではなくてコオロギのほうに感情移入してしまう。晩秋の夜にコオロギをストックしているケージから鳴き声がきこえてくる。それはやがて季節の記憶となりうる情景を描く。飼育者である少年はその”演奏者”たちを愛してしまう。それを自覚してしまう。しかし、アマガエルが冬を乗りこえるためには、生き餌として、かれらを飼育し、繁殖させ、与えつづけなければならない。だが、はたして、彼は誰のことを一番目に愛しているのだろうか?
『誰のことを一番 愛してる?』のテーマには、このような”一番目”に対する倒錯があるのは云うまでもない。しかし、センターポジションを与えられた平手友梨奈が表現してしまったのは、一番目に愛されていることの孤立感である。彼女は、愛情ほど人を深刻に傷つけるものはないと訴える少女特有の「うつむき」を表現してしまった。この楽曲のテーマに沿った表情、仕草をみせるのは、平手友梨奈の両隣で踊る松井珠理奈や宮脇咲良だろう。一番目に愛されている「女」に対する嫉妬と情動を見事に露出している。これが作詞家の狙いどおりの光景ならば、やはり、そこに未曾有の俗悪さを感じてしまう。そのようなアイドルシーンの醜態と呼ぶべき輝きの一部始終を俯瞰している齋藤飛鳥。伊藤万理華、小嶋真子、渡邉理佐といった、ダンススキルの高いアイドルたちは、鳴りを潜めるようにパフォーマンスをしている…。辛うじて個性を発揮しているのは星野みなみ、彼女にとっては、きっと対岸の火事であるから。
アイドルとして、きわめて豊穣なストーリーを抱える人物の交錯を実現し、アイドルの現在と未来を「欲」という視点から物語を(群像劇として)語ることに成功したのだから、なんとも贅沢な楽曲である。

この豪華な共演、競演、饗宴でもっとも評価できるのは、やはり星野みなみになるだろうか。楽曲のテーマと、自身の作り上げる虚構が相反するものであるのに、それを楽曲のなかに溶け込ませている。まるで魔法を使ったみたいに。楽曲の抱える俗悪さの中に星野みなみのコケットリーが含まれても違和感を投げつけないのだから、凄い。ニ番目という命題(他人という定義)にたいして一生懸命に、健気に、可愛らしく振舞う「女性」を演じている”つもり”のパフォーマンスが実にコケットリーだ。
では、これだけのメンバーを揃えても叶わなかった、平手友梨奈の圧倒的な存在感をうち消すことが可能なアイドルはだれか?という遊び、愉しみを許されるならば、本命は、グループアイドルのあらゆる常識を覆す大園桃子。次点にダンススキルならば平手友梨奈を凌駕する門脇実優菜、大穴として中井りかを私は挙げたい。

 

総合評価 76点

現在のアイドル楽曲として優れた作品

(評価内訳)

楽曲 14点 歌詞 16点

ボーカル 14点 ライブ・映像 16点

情動感染 16点

引用:見出し、(*1) 秋元康 / 誰のことを一番 愛してる?

歌唱メンバー:岡田奈々、小栗有以、小嶋真子、向井地美音、松井珠理奈、宮脇咲良、伊藤万理華、北野日奈子、齋藤飛鳥、寺田蘭世、星野みなみ、堀未央奈、今泉佑唯、菅井友香、平手友梨奈、渡辺梨加、渡邉理佐、長濱ねる

作詞 : 秋元 康 / 作曲・編曲 : 佐久間和宏

 

NGT48 世界はどこまで青空なのか? 評価

「争うことのない世界へ」 ミュージックビデオ、ライブ表現について、 NGT48の ...

NGT48 青春時計 評価

「ポニーテールがジグザグ揺れる」 歌詞、楽曲について、 NGT48のメジャーデビ ...

AKB48 恋するフォーチュンクッキー 評価

「恋するフォーチュンクッキー」 歌詞、楽曲、ミュージックビデオ、ライブ表現につい ...