AKB48 百合を咲かせるか? 評判記

「百合を咲かせるか?」
歌詞、楽曲について、
”ヤンキードラマなんか 絶対時代遅れさ”、このような説明的な描写、冗長性を回避できなかった作詞家の資質不足をどう断じるべきか。現代日本においてヤンキー=暴力の存在は、都市にとってはアナクロで滑稽な排除されるべき存在である一方、地方では未だにひとつの権威として屹立している。そこに見る乖離が、インターネットの普及による距離感の喪失によって毀損された。その結果、都市と地方という構図だけではなく、実像と思考にあたらしい乖離がうまれた。そういった現実を描く歌詞であればおもしろいと感じるはずだが。アイドルに歌を歌わせようとするとき、往々にして、作り手の思考水準が引き下げられてしまうのはなぜだろう。
また、マジすか学園シリーズをとおして安易な自己模倣に陥っているとも感じる。もちろん、それは裏を返せば、テーマ、コンセプトを明確に定めている、と云えるかもしれない。たとえば、ラップ調の曲をアイドルに歌わせるのと同様に、アイドルにヤンキーの立ち居振る舞いをとらせるのは、少女たちにアイドルという自分とは別の存在を演じきるための覚悟の要求をしているのだろう。だから、準備された歌詞も徹底的に”ダサイ”。
しかしまた、だれよりもはやくこの”ダサイ世界”にのめり込めれば、かつての松井玲奈のようにスリムチャンスをものにすることができるはずだ、という希望もある。同時に、このようなきわめて内側の事情をファンがどこまで許容するべきなのだろうか、という疑問も拭えない。結局、提供された楽曲が、アイドルの現在とリンクしているのか、という点が重要なのだろう。そしてこの『百合を咲かせるか?』にはアイドルの現在を映すようなストーリー性をまったく感じない。よって残るのは”ダサイ”のみであり、自己を傷つけるために「暴力」を用意した、自傷的な楽曲にみえてしまう。それが狙いなんだ、と云われたら、黙って立ち去るほかにないのだが。
総合評価 26点
聴いていることは秘密にした方がいい作品
(評価内訳)
楽曲 4点 歌詞 3点
ボーカル 5点 ライブ・映像 9点
情動感染 5点
歌唱メンバー:岡部麟、荻野由佳、小栗有以、小畑優奈、加藤美南、倉野尾成美、城恵理子、髙橋彩音、瀧野由美子、谷口めぐ、本間日陽、馬嘉伶、松岡はな、向井地美音、山内瑞葵、山本彩加、横山由依
作詞:秋元康 作曲:木下めろん 編曲:木下めろん