AKB48 久しぶりのリップグロス 評判記

AKB48, 楽曲

(C)久しぶりのリップグロス ジャケット写真

「見えなかったリップグロス」

歌詞、ミュージックビデオについて、

60枚目シングル。センターに選ばれたのは千葉恵里。
かっこ悪い、ダサい、幼稚さを描くという”路線”は前作から変わらず、作風・志向を継いでいる。本人たちはあくまでも流行に乗っているつもりだが、その実、常にトレンドの一歩後ろに立っているという”ダサさ”は相変わらずで、その点は、現在のAKBらしさを鮮明に打ち出している、いや、”今のAKBらしさ”なるものが否が応でもジワジワと出てきた、と云えるかもしれない。
楽曲を演じるアイドル自身がメディアを通して語ったように、たしかに、当時、”今のAKB48の有り様”を大胆に打ち出した『ポニーテールとシュシュ』と響き合う点があるように思う。岡部麟、大西桃香、山内瑞葵など、演者の表情も当時のアイドルに負けず劣らず、瑞々しい。

とはいえ、映像作品の内に見る、映像作家のアイデアの月並みさは言うまでもなく、作詞家の詩情にも喚起されるものが一つもない。「見えなかったリップグロス あの頃のマスクを外して」という、コロナ禍とその後日を撃とうとする詩情も、こじつけでしかない。夏、海、恋(とくに失恋)に向けた情感が枯渇しているのか、そもそも歌を口ずさむアイドルに魅力がないのか、魅力を感じないのか。まず音楽があり次にアイドルがある、という音楽の純粋さを持っているわけでもなく、音楽とアイドルが共にある、というグループアイドル的香気も拾わない。音楽とアイドルがとけ合っていないから、アイドルによって表現されたその音楽に触れても何一つ喚起されるものがないのだろう。
仮に『ポニーテールとシュシュ』を傑作と呼ぶならば、それは当時のAKB48にしかできないことをやっているからではないか。今作品はどうだろうか。今のAKB48にしかできないこと、を表現しているだろうか。

田口愛佳、武藤十夢、谷口めぐの3名が”選抜”から漏れた点には首を傾げるが、歌唱メンバーを20人から16人に減らした点、節目のシングルに新しいセンターを抜擢した点、また、17期生の佐藤綺星を抜擢した点は好印象。*1


歌唱メンバー:岡田奈々、千葉恵里、向井地美音、山内瑞葵、大盛真歩、柏木由紀、村山彩希、岡部麟、本田仁美、小田えりな、大西桃香、小栗有以、下尾みう、倉野尾成美、佐藤綺星、茂木忍

作詞:秋元康 作曲:川浦正大 編曲:APAZZI

見出し、*1 秋元康/久しぶりのリップグロス