乃木坂46 扇風機 評判記

「心がざわざわしてる」
楽曲、ミュージックビデオについて、
6枚目シングル『ガールズルール』のアンダー楽曲。センターポジションで踊るのは齋藤飛鳥。
表題曲のセンターに白石麻衣、アンダー曲のセンターには齋藤飛鳥、と今日振り返ってみれば再現不可能と言い切れる構成を作っている。第一期生のなかに「次世代エース」への期待感が作られ、そのとおりに物語が展開し成功したのは乃木坂46のみであり、それを可能にした齋藤飛鳥の資質の高さにあらためておどろかされる。後日、数多くのアイドルグループがこの物語の展開=第一期生内における世代交代を模倣しようと試み、ことごとく失敗に終わっている点からも、齋藤飛鳥が奇跡の登場人物であることを証している。
映像作品で描かれた、アンダーと団地、空と明暗といった構図を背景に走り回る少女特有の瑞々しさ、躍動感、日常の素顔を隠そうとする憂鬱とそれを払拭する、ピュアなものを守り抜こうとする笑顔の提示は、アイドル・齋藤飛鳥の登場を教え、今作品を齋藤飛鳥の出世作とするファンも多い。今作品との出会いがのちに『Sing Out!』へと結実した事実に鑑みれば、アイドルとの成長共有、そのプロローグとして文句なしの作品と云える。
歌詞について、
齋藤飛鳥を「紹介」された際の作詞家のレトロスペクティブな感興、つまり童心に回帰しつつ記した齋藤飛鳥へのラブレターとして読むならば、なかなかおもしろい。作詞家が「あの頃の自分に戻って」書いたラブレターを読むことでアイドルの魅力が明快に打ち出されるという構図はきわめて文学的。アンダーを不可逆なものとしてとらえずにあくまでも希望と扱っている点も作詞家・秋元康らしさがよくあらわれている。(*1)
総合評価 67点
再聴に値する作品
(評価内訳)
楽曲 13点 歌詞 14点
ボーカル 13点 ライブ・映像 14点
情動感染 13点
歌唱メンバー:市來玲奈、伊藤寧々、衛藤美彩、柏幸奈、川後陽菜、川村真洋、齋藤飛鳥、斎藤ちはる、中元日芽香、永島聖羅、能條愛未、畠中清羅、樋口日奈、宮澤成良、大和里菜、和田まあや
作詞:秋元康 作曲:角野寿和 編曲:野村陽一郎
引用:見出し、(*1) 秋元康/扇風機