乃木坂46 ワタボコリ 評判記

「僕の命をあげる」
歌詞、楽曲について、
アイドルが口ずさむ詩としては「葛藤」が過剰だと感じる。仮に、現代でアイドルを演じる少女の物語に没入するファンの前日譚のひとつとして描いたのだとしても、大仰に映る。感傷的で、悲哀に満ちていて、滑稽だ。
だが、音楽と一対一で向き合うきわめて個人的な時間をつくるとき、「ワタボコリ」には、デビュー当時の村上春樹の小説を読むような慰め、悲しみや苦しみをまぎらせる、自己を解放させる魅力=自己療養への希求がある、とも感じる。再聴に耐えうる楽曲に仕上がっている、と。
ただ、看過できない不満点もある。結局、宙を舞うワタボコリを眺める「僕」が手繰り寄せる結論、それが他者への献身、プラトニックラブへの傾倒であるのはアイドルポップスの定めということなのだろうか。つまりここで浮き彫りになるのは、アイドルが歌うには過剰な詩だと感じさせることで、「グループアイドル」というコンテンツに対するある種の不真面目さ、どこか真剣になることができない、といった「恥」をファンに自覚させる、批評性のある歌詞を書いたのにもかかわらず、最終的には作詞家自身もその不真面目さを作っているであろうエレメントに帰結してしまう「落胆」だろう。
ボーカルについて、
アイドル個々の「声」が聴けるのは好いが、表現行為が画一的であり、大げさで古臭い。作詞家による過剰な詩情を前にして、他の作り手が、楽曲に対する個々の解釈をうまく表現することができなかったのか、酷く硬直している。
総合評価 60点
再聴に値する作品
(評価内訳)
楽曲 13点 歌詞 14点
ボーカル 7点 ライブ・映像 11点
情動感染 15点
引用:見出し 秋元康/ワタボコリ
歌唱メンバー:北野日奈子、寺田蘭世、堀未央奈
作詞:秋元康 作曲:ハサミマン 編曲:ハサミマン