SKE48 山下もえ 評判記

SKE48

山下もえ (C) スクランブルエッグon the web

「エンドロール」

山下もえ、平成4年生、SKE48の第一期生。
乃木坂46桜井玲香に似ている。とはいえ、桜井玲香がアイドルとしてデビューしたのは2011年であるから、SKE48のオープニングメンバーの一員である山下もえのほうが先達にあたり、桜井玲香が山下もえに似ている、と表現するほうが正しいかもしれない。ただ、1年余りでアイドルの物語に幕を閉じた山下もえの、その頼りないアイドルの輪郭を埋めるのに、桜井玲香という存在は多かれ少なかれ役立つかにおもわれる。たとえば、枯淡的に日々振る舞うアイドルの姿勢が、大衆に評価されず、むしろ、無気力なアイドルだ、と誤解されてしまうところなど、この二人の少女はよく通い合っている。なによりも、アイドルの得物、あるいはアイドルのアイデンティティとして「ダンス」をつよく掲げ、かつ、そのとおりに「ダンス」を軸にアイドルが評価され、アイドルを育むという、その共通点には、なにか不思議な縁をおもわず見出してしまう。他人の空似、とはよく言ったもので、そういった神秘的な、超常現象は、それが神秘的であるがゆえに、幻想的イメージを編み続けるアイドルシーンにおいては、あたり前のように出会し、毎回、驚かされる。
山下自身、他のアイドルのことを、ファンの前で語る際には、まずなによりも「ダンス」に重きをおき、その批評眼の根底としている。仲間のアイドルがつくる笑顔や泣き顔の意味を探りファンに教えようとするとき、常に、ダンスつまり身体の動きを見て、言葉を編んでいたようである。
アイドルとは、やはりステージの上で舞い踊り輝く存在だから、山下もえのその行動は、核心をついているようにおもう。そういったところも、同期のメンバーや後輩の魅力を雑誌のインタビューで語る際には、まずステージ上での振る舞いに着眼した桜井玲香と通い合っている。
とはいえ、グループアイドルとして文句なしのキャリアを築いた桜井玲香に対し、桜井のアイドルとしてのビジュアルをある意味では先駆けていた山下もえの物語は、きわめて貧弱である。オーディションに合格し、夢の扉をひらいてから1年余りで「アイドル」を卒業している。正直、語るべきところ少し、と云うほかない。
ダンスが上手いのに”アイドル”のうだつが上がらない。これは現在のシーンではもはや見慣れた光景だが、もちろん、まだカフェテーブルの上で物語を書いていた当時のシーンにも、これはうんざりするほど響きわたった悲鳴であり、山下もえもそこに含まれる登場人物と呼べる。桜井と山下では、与えられた境遇があまりにも違いすぎるし、なによりも桜井玲香には、山下もえにはない魅力、これがやはり多くあったようにおもう。
よって、桜井玲香の成功と、山下もえの失敗から、アイドルシーンの有り様が変化した、などという安易な感慨を置くつもりはないのだが、卒業の理由に「グラフィックデザイナーを目指すため卒業という道を選びました」と語った山下が、結局は、エンドロールを巻き戻すように、SKE48卒業後、再び、アイドルシーンに帰還し、現在も「アイドル」というコンテンツを生活の中心に置く動機には、あるいは、「山下もえ」が大成することを許さなかったアイドルシーンの有り様が、いつの間にか公衆に屈服し、「山下もえ」のようなアイドルでも成功をつかめる、輝ける場所に変化したのではないか、という仮定の出現によって、自己の可能性をどうしたって諦められない、夢を叶えることができない現実を受け入れられない、遠く薄れていく夢を諦めることが永遠に受け入れられない人間の、枯れないもだえがあるのではないか。*1

 

総合評価 49点

辛うじてアイドルになっている人物

(評価内訳)

ビジュアル 11点 ライブ表現 14点

演劇表現 7点 バラエティ 7点

情動感染 10点

SKE48 活動期間 2008年~2009年

引用:*1 ナタリー / SKE48チームS山下もえ、年末Zeppワンマンをもって卒業

 

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