SKE48 北野瑠華 評価

SKE48

 

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「ドラマツルギー」


北野瑠華の「美」を一言で表現するのはむずかしい。艶冶な姿形で観者の情動を容易く引き起こさせるが、コケティッシュな仕草をみせることはない。ヴァンプだが色彩感が欠如している。ラテン的でハスキーだがその鼻声で甘えることはない。艶然というよりはキッチュなスマイルである。キュートとプリティを行き交いしていると云えばよいのか、統一性がなくアンバランスな美の持ち主である。そのアンバランスさが、妖美へと昇華され、ながい時間眺めていても飽きないビジュアルをつくり上げる。ときおり見せる、投げやりな立ち居振る舞いから、”つよがり”というよりは”独りよがり”な雰囲気を纏う人物と云える。

思弁をくり返した後に発する言葉が、対象の心の底に落ちる前に燃え尽きてしまう…、この彼女の性質は、乃木坂46の斎藤ちはると似ている。その事実を直視しても、進路を変えずに愚直な前進を試みる点は、おなじく乃木坂46の寺田蘭世と酷似している。アイドルとファンのクリエンテス的な関係については斉藤真木子の項で述べた通りだが、北野瑠華もまた、このクリエンテスという関係に苦戦している人物に映る。

北野瑠華は、アイドルとしての成長を”写真”という虚構を通じてファンに伝え、それを眺めるファンの情動を引き起こさせることに成功している。古典的ではあるが、正統的なアイドルとして成立する人物であると、高い評価をおくることができる。しかし、自身が引き起こした情動を観客に感染させるという観点では、その資質が致命的に欠如した人物と云える。感情を吐露すること(あるいは、感情を吐露しているようにみせかけること)は、実は容易である。むずかしいのは、その感情を吐露する行為によって自身の情動を引き起こし、それを対象の心に伝え、感染させることである。アイドルだけではなく、現代の女優や歌手にも求められるのは、心を裸にして、その闇をみせることである。女優の山田杏奈の成功は、この資質の存在に因るところが大きいだろう。女優ならば演技で表現することが可能だが、現代アイドルの場合、日常の立ち居振る舞いや仕草、対話のなかで自身のストーリーを物語る必要がある。つまり、アイドルは、ドラマツルギーという概念に対して、きわめて意識的になる必要がある。

「チェーホフが言いたいのはこういうことだ。必然性というのは、自立した概念なんだ。それはロジックやモラルや意味性とはべつの成り立ちをしたものだ。あくまで役割としての機能が集約されたものだ。役割として必然でないものは、そこに存在するべきではない。役割として必然なものは、そこに存在するべきだ。それがドラマツルギーだ。ロジックやモラルや意味性はそのもの自体にではなく、関連性の中に生ずる。」

(村上春樹「海辺のカフカ・下」)

北野瑠華は、アイドルを演じることを、「事実をねじ曲げるような嘘」と捉えているようだが、アイドルを演じることは、決して、そのような「嘘」ではない。アイドルを演じるということは、もう一つの別の世界で、もう一人の別の自分を作り上げることである。それがアナザーストーリーとなって現実の世界に降りてくる。だが、そもそも、アイドルのみならず、人とは生活をする上で、すでに自身の役割を意識的にしろ、無意識にしろ、理解をし、それを演じているということを忘れてはならない。つまり、アイドルを演じることを「嘘」として扱ってしまうと、自己の存在そのものを否定することになってしまうのだ。この点に対する姿勢、錯覚、勘違いが、北野瑠華を隘路に導いた原因ではないか、とおもう。

「オレが言いたいのはね、あんたの問題点は、頭の悪いことにあるんじゃないってことなんだよ」とオオツカさんはまじめな顔で言った。
「そうでありましょうか?」
「あんたの問題点はだね、オレは思うんだけど、あんた……ちょっと影が薄いんじゃないかな。最初に見たときから思ってたんだけど、地面に落ちている影が普通の人の半分くらいの濃さしかない」
「はい」(中略)
「だからあんたもどっかの迷子の猫を探すよりは、ほんとは自分の影の残り半分を真剣に探した方がいいんじゃないかと思うけどね」

(村上春樹「海辺のカフカ・上」)

北野瑠華がアイドルとして演るべきことは、あたらしい自分の発見や構築ではなく、これまでに”個性(迷子の猫)”を探そうと苦闘をした過程で自分の体の中からすっぽりと欠落させてしまった”なにか(影)”を取り戻そうとする「行動」だろう。その、残り半分の影を探す旅をファンの前で物語ること(ドラマツルギー)ができれば、隘路の壁を毀し、自我を確立できるのではないか。その自我がグループのイデオロギーと止揚することによって、はじめて彼女の存在理由が満たされていくのだとおもう。

 

総合評価 59点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 16点 ライブ表現 13点

演劇表現 10点 バラエティ 13点

情動感染 7点

SKE48 活動期間 2013年~

評価点数の見方