乃木坂46 4期生 注目度ランキング

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乃木坂46・第四期生の11人 (C)エキサイトニュース

「群像劇の再来」

グループの黎明期に誕生し、グループをブレイクに導いた少女たちの群像劇を、次の世代を生きるアイドルが塗り替える、という出来事に私たちファンは未だ遭遇しない。なにかの間違いで、あるいは時代のズレによってアイドルの扉をひらく少女たち。彼女らが抱える不完全さこそ、群像を呼吸させる原動力であり、奇跡との遭遇と名付けられるが、第一世代によって完結を迎えた物語に吸い寄せられる、あたらしい時代を生きるアイドルの多くは不完全さを欠如している。乃木坂46の第四期生の魅力とは、次世代でありながらも、グループアイドルの第一期生だけにそなわる不完全さを所持する点にある。西野七瀬に触れた最後の子供たち、この事実が招く束縛は、むしろ11人の少女たちを第一期生が描いた群像劇の外側に放り出してくれた。まったくあたらしい物語を書くのは過去と完全に隔てられた存在ではない。過去の終りに直に触れた者だけが、次の、まったくあたらしい物語を描けるのだ。

2018年8月20日に坂道合同新規メンバー募集オーディションを突破し、アイドルへの扉をひらく。同年、12月1日、公式サイトへのプロフィール掲載によって正式に乃木坂46への加入を果たす。以降、『お見立て会』でのお披露目、舞台公演『3人のプリンシパル』、『乃木坂46 23rdシングル「Sing Out!」発売記念 ~4期生ライブ~』の開催、『乃木坂どこへ』の放送開始、と少女たちの書く物語のページが増すにつれ、彼女たちの批評を作るための記憶と記録に厚みがみとめられるようになった。
ただし、(遠藤さくらを除けば)現時点ですべての評価項目を満たす批評を作り、点数を付けることは、まだむずかしい。だが、アイドルとしての輝き、可能性に対する身勝手な妄執を描くことはできる。「次世代」と呼ばれ、苦渋を抱える少女に何かしらの順位をつける行為そのものに抵抗はないが(プロとして少女たちはすでにアイドルの順位闘争と対峙しているのだから)、その手段には迷いが生じた。解決に役立ったのがメモ帳である。一人ひとりのアイドルを実際に眺め、こころに湧きあがった感情とアイディアを紛失しないためにメモを走り書く。すると、どうしても、アイドルに対する描写の量に差が出てくる。たとえば、STU48の「暗闇」のライブをはじめて観たとき、私は、センターで踊る瀧野由美子よりも磯貝花音に自身が惹き付けられていた事実に、批評を作る段階、つまりメモを読み返すとき、そこに示された文量の差(アイドルに対する熱量の差)によって気付かされた。その瞬間から、あらためて、磯貝花音というアイドルに注目を向けた経験がある(もちろん、それがアイドルとしてのすべての評価につながるわけではない)。今回は、このような体験をもとに筆者が注目する、関心度の高い4期生は誰か、順位をつけてみようとおもう。注目という言葉に込められる意味と、紙に記され積まれたアイディア群の要約=詩的さは合致し、裏付けと機能するのではないだろうか。それがアイドルガイドの要件を満たす結果になれば幸いである。


4期生 注目度ランキング 11
田村真佑

田村真佑 (C) 乃木坂46公式Twitter

田村真佑、平成11年生。
すでに人気、実力、共に申し分ないアイドルを作っている。クールな印象を受けるが、笑うと空気感が変わり、途端にチャーミングなアイドルが立ち現れる。グループアイドルとして、乃木坂46の一員として、素晴らしいスタートを切れたのも、彼女の持つ空気感による賜物だと確信する。しかし、物語の展開のはやさゆえか、資質減衰への兆候が窺え、成熟があぶり出す瑕疵に戸惑っているようにも映る。彼女はすでに隘路に踏み込んでしまったのではないか、とすら感じる。境遇がもたらしてくれる受動的な経験の共有とはべつに、青春のすべてを犠牲にして日常を演じようとする仲間たちの個人的体験に、現実の青春体験を打つけ置き去りにされるのを防ごうとする様子は、明徴な世界を提示すると同時に共感性を実らせ、頼もしささえ投げつけるが、どこか物足りず空振りしているようにみえてしまうのは何故だろう。


4期生 注目度ランキング 10
清宮レイ

清宮レイ (C) 乃木坂46公式Twitter

清宮レイ、平成15年生。
たったひとつの場面だけで、全身に降りかかった評価のすべてを覆すような底しれぬ無邪気と活力の表示があり、個性をつよく発揮できるアイドルだと感じる。ライブステージ上でみせる佇まいからセンターポジションへの憧憬を描きやすい人物と云えるが、一方で、彼女の姿形や立ち居振る舞いとは、古典的なアイドルのジャンルらしさなどではなく、陳腐そのものだと扱われてしまうのではないか、という危惧もある。乃木坂46の通史を読み、アイドルの連なりを愉しむファンを過去の眩しい想いに浸らせる光景よりも、無邪気を裏切る屈託の露出をどこか期待してしまう奇妙な胎動がある。疲弊によって、現在のファンに読ませる日常の描写のすべてが演劇の一部に過ぎなかったのだと誤解された際に、清宮レイの表情がどのように変わるのか、ひとつの見どころになるのではないか、と云ったら皮肉にきこえるだろうか。


4期生 注目度ランキング 9
矢久保美緒

矢久保美緒 (C) 乃木坂46公式Twitter

矢久保美緒、平成14年生。
きらびやかに輝く才能に囲繞される苦渋や憂鬱、惨めさ、孤独感の所持をテレビカメラの前で看破され、涙をながすという、情動感染の観点において文句なしの物語をすでに描いている。処女性を武器にするアイドルの一人だと妄執するが、すでにその身勝手な妄執を裏切りつつあり、落胆を与えたかとおもえば、さらにそこへもういちど傾きなおそうとする気配をつくる。不安定な秤のような仕草を日々みせており、あまりにも貧弱で、あまりにも無防備に映るが、彼女の情動に振りまわされ、それでもなおアイドルの中心軸を掴んで放さない読者が一定数存在するのならば、グループの歴史において未だ手がつけられていない、ファンとアイドルのクリエンテスの構築に成功するのではないか、と想像する。だとすれば、それは乃木坂46があたらしい局面に踏み込む兆しになるだろう。


4期生 注目度ランキング 8
金川紗耶

金川紗耶 (C) 乃木坂46公式Twitter

金川紗耶、平成13年生。
きっと、人気者になるだろう。第一期生感がもっとも色濃く、過去に遭遇した物語の面影を様々なシーンで拾える。もちろん、それが寄す処としてノスタルジーの提供のみで終わるわけではない。彼女の本領とは、順位闘争との対峙ではなく、稚気を求め、何者かのアンチテーゼと化けようとするが、けして成立をむかえない絶望感と「君じゃなきゃ」という希求力を発揮しない心のひずみ、静かな葛藤にある。”今日も今日がはじまる”たどたどしい日常感の提示こそ、金川紗耶のアイデンティティとなるのではないか。ダンスの上手さ、表現の豊かさにも定評がある。(筆者は未だそのような場面に遭遇しないものの)同業者ですら、その姿形が作る鮮烈さを前に、手放しの称賛を贈っており、日常と非日常を行き交う後姿がみとめられる。


4期生 注目度ランキング 7
掛橋沙耶香

掛橋沙耶香 (C) 乃木坂46公式Twitter

掛橋沙耶香、平成14年生。
すでに多くのファンのこころの内側にタッチし、自身の物語に没頭させることに成功している。何時、ブレイクをしてもおかしくない。遠藤さくらを前に、外伝的な主人公としての役割を余儀なくされるのだろうが、常に、自身を本篇の主人公と描く物語を王道とすり替えてしまうような握力の強さの誇示があり、胎動する”未来の卵”に映る。再会するたびに、過去の彼女の美しさ(想いで)を更新するような驚きがあり、そのあたらしい美はファンに強烈な一撃を与える。先入観の強さと奔放を共存する女性特有のコケットリーが次の出逢いまでにどのようにかわっているのか、興味が途絶えない。退屈さともっとも距離を作るアイドルと云える。


4期生 注目度ランキング 6
早川聖来

早川聖来 (C) 乃木坂46公式Twitter

早川聖来、平成12年生。
舞台演劇の余韻を引きずり込むように、日常の立ち居振る舞いの端々が芝居じみているのは、自身の演劇表現力のたかさがアイドルとしての得物になると自覚しているからだろう。驚き、たじろぐのは、一連の立ち居振る舞いがまったく不快感を投げつけず、誘き寄せた刹那の幸福を大切に抱きしめようとする切迫感と儚さを描く点だ。ある種の剣呑さが現実と仮想の保持にヒビを入れており、それが彼女の物語を読む人間とアイドルを演じる少女に独特な間合いを生んでいる。つまり、才能という一点において、第四期生のなかでずば抜けた存在だと受け取る。グループアイドルとの乖離を描くアイドルの一人とも云えるだろう。


4期生 注目度ランキング 5
筒井あやめ

筒井あやめ (C) 乃木坂46公式Twitter

筒井あやめ、平成16年生。
いわゆる最年少ポジションに立つが、そのような謳い文句、キャラクターに頼る必要性をまったく感じられない正真正銘の逸材であり、むしろ、ひとりの女性として扱うべきか、少女と扱うべきか、現実的な問題にファンを直面させている。幼さを残したルックスだが、なによりも瑞々しく清楚に満ちている。そもそも、そこに根付く幼さは成長した段階で面影となる類のものではなく、成熟や喪失を経てもなお、鑑賞者の前に提示されつづける想念の一種なのだ。だから、触れることに躊躇をおぼえる。筒井あやめというアイドルに触れる人間が、まるで禁じられた遊びのような背徳感と神秘を自覚するのは、年齢の問題ではなく、彼女が生来の資質を勇敢に発揮するからである。想像や妄想に感触などないが、眠りのなかでみる夢には現実の感触がたしかに存在する。明喩でもメタファーでもなく、実際に対象に触れたときの手触りが夢にはある。筒井あやめには、この夢の感触(リアリティ)を現実世界で再現してしまう魔力が宿っているようだ。


4期生 注目度ランキング 4
北川悠理

北川悠理 (C) 乃木坂46公式Twitter

北川悠理、平成13年生。
このページのまえがきを書いているとき、デジャヴュに襲われた。デジャヴュの中で次におとずれると予告された光景が北川悠理であり、そしてこの「北川悠理」と文字を打つ瞬間もまた、あたらしい別のデジャヴュとして描かれていた。つまり、北川悠理にはアイドルの裏側にある素顔を妄執する人間の、さらにそのさきを行く幻想があるのではないか、とおもう。「なんとかしてこの女の本性を見極めてやろう」と鼻息を荒くする人間は、少女を覆う霧に自身も包まれ、迷子になる。まさしくファンタジーと呼べる空間が、すでに生み出されている。彼女の立ち居振る舞いとは、ケレンでも仮装でもなく「仮想」である。一度でも関わってしまえば無害ではすまされない深刻さを無垢と表現するのならば、彼女のような境遇を持つ人物は、文芸の世界に踏み込むべきではないと云える。しかし、なにかの間違いで架空の世界に必然的に迷い込んでしまった…、だがそこに漂う「希求」こそグループアイドルの本質的な魅力なのかもしれない。北川のフォークロア的日常は、この忘れていた事実に邂逅を落とし込むのだ。想像力豊かな振る舞いが作る、不思議の国のアリス的な幻想文学は、きわめて独特なアイドルの成立を予感させる。


4期生 注目度ランキング 3
賀喜遥香

賀喜遥香 (C) 乃木坂46公式Twitter

賀喜遥香、平成13年生。
「乃木坂らしさ、乃木坂らしさと繰り返すけれど、じゃあ乃木坂らしさって何?」という疑問は、ファンだけでなく、アイドル自身にもあるはずだ。その問いに対する解釈と表現を、自己の感性に頼る行為こそ自我の獲得を試みる過程であり、アイドルの成長共有の一端と云えるだろう。賀喜遥香からは、この乃木坂らしさがすでに目に見えるかたちで提示されており、しかも、古ぼけた使い回しの模倣品などではない。彼女はこれまでの乃木坂46の通史に描かれたどの登場人物とも共時しないあたらしいアイドルである。”乃木坂らしさ”をそなえているのに、過去の物語と一致しない…、この逆説と矛盾の作る循環こそが、彼女に乃木坂らしさを付しているのだ。不思議なテンションの持ち主で、翳りを強く帯びた人物だが、同時に、何者にでもなれる凛とした透明感がある。賀喜遥香の成長物語は乃木坂46の移動と重なり合い、筐体の”イロ”を映す新しい鏡、マスターピースになるのではないか、と期待させる。


4期生 注目度ランキング 2
遠藤さくら

遠藤さくら (C) 乃木坂46公式Twitter

遠藤さくら、平成13年生。
乃木坂46の10代目センター。つよい主人公を求め、筐体が描く模索の劇への回答として、文句なしの人物。センターポジションに立つ彼女を眺めていると、なるほど、と納得させられる場面に多く遭遇する。逸材感的な輝きは放たないが、主人公への業を絶対的な結晶にして握りしめる儚さをすでに表出している。そのような観点に立てば、西野七瀬と共時する登場人物と呼べるが、しかし、西野七瀬の系譜に連なるのではなく、まったくあたらしいタイプのアイドルに映るのだからおもしろい。遠藤さくらという人物は、グループアイドルの分野に縛られておらず、『わたしには、なにもない』を演じた時点で女優としての存在理由を明確に掴んでおり、南沙良や山田杏奈といった若手女優たちとおなじ地平に立ち、おなじ生彩を放っているのだ。しかしこれは過褒ではなく、危惧である。彼女は、アイドルとして日常を演じる、青春の犠牲、現実と仮想の行き交い、成長の共有といった幻想が背負う不気味さに乏しい。彼女は収斂の向こう側に誕生したアイドルであり、他のアイドルを置き去りにしている、のではなく、まったく別の”時間”に暮す登場人物と云える。近い将来、グループアイドルと乖離する自己の苦渋と対峙する危うさを抱えており、ある日、突然”空扉”を開くのではないか、不安の尽きないアイドルに映る。


4期生 注目度ランキング 1
柴田柚菜

柴田柚菜 (C) 乃木坂46公式Twitter

柴田柚菜、平成15年生。
演劇行為に対する自意識の有り様は同世代のアイドルたちと一線を画している。彼女は、日常を演じることへの拒絶感、疚しさの否定を隠せない。自身の作るフィクション(ウソ)が他者を決定的に傷めつけ、摩耗させ、たいせつに抱えてきたものを欠落させるのではないか、という過剰な自意識の発露を、あらゆるシーンの中で、その日、一度だけ溢す。悲喜劇の通過最中に唐突に提示される現実感覚に支配された少女の退屈や倦みの徴の”ような”眼、そのたったひとつの表情が、脳裏に焼き付いて離れなくなる。それを目撃してしまったファンは彼女の視線の意味を必死に探ってしまう。おそらくそれはフィクションを作ることへの抵抗の表明であり、あたりまえの日常から非日常の世界に放り込まれた若者の戸惑いや葛藤を熟知した人間特有の後ろめたさである。そこに発生する逆転は、第一世代や次世代といった狭い射程を凌駕する物語への原動力になってしまうだろう…、アイドル自らが求める求めないにかかわらず。  


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