乃木坂46 中元日芽香 評判記

乃木坂46

中元日芽香(C)日刊スポーツ

「被害妄想の爆発」

『居場所もなかった』…被害妄想の爆発がそのまま妄想的イメージに連なり、現実像全体を解体してしまうダイナミズムはかなり興趣をそそるものがある。

福田和也/作家の値うち「笙野頼子」

中元日芽香、平成8年生、乃木坂46の第一期生。
言葉の真の意味で熱狂的なファンを生んでいる。『作家の値うち』において、「文壇の名言の一つに、『女流作家の被害妄想は、才能の証し』という台詞がある」、と印されているが、これは中元日芽香(アイドル)にも当て嵌まるのではないか。「現実とも妄想ともつかない攻撃・非難を繰り返してきた」笙野頼子の作家としての「経歴」と、中元のアイドルとしての経歴、神童と呼ばれ名声をほしいままにする中元すず香や天才と称賛され自己を超克し続ける生田絵梨花へのオブセッション(神童と呼ばれる妹からの脱却を試み、新天地として足を踏み入れた乃木坂でまたもや天才と呼ばれる人間の隣に立つことになったのは、なんとも皮肉な話だが)に鎖された嫌味を、作り手、同業者、ファン問わず、投げつけてきたその醜態が類似しているのは言うまでもなく、なによりも、「夢と現実の境界の不分明、現実と妄想の相互浸透」という小説の設定(中元の場合、アイドルとしてのキャラクター設定)の立ち上げに際し、
「被害妄想」が役立てられるところに、福田和也をして「現代を象徴する現象としてのクレーマー」と言わしめた笙野頼子との一致がある。
「被害妄想によって他者・社会にたいする姿勢が決定される」のならば、中元日芽香にとってのその「姿勢」を決定するものとは、人が生まれ持つ才能、ある種の天意に向ける「被害妄想」にほかならない。序列闘争において、天意に愛された才能を持った人間に敗北を喫し続けることで、屈託し、やがて感情を歪め卑屈になり、アイドルを演じる当事者としてのスクープ発信に憑かれてしまった。その彼女を眺めることで、アイドルを演じる少女そのものが壊れて行くことの予感に打ちのめされるという、「緊張感の高」さ、人間感情の「月並み」さ、あられもなさの提示と、その逃れ難さに中元日芽香というアイドルの本領がある。*1

 

総合評価 62点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 11点 ライブ表現 14点

演劇表現 8点 バラエティ 14点

情動感染 15点

乃木坂46 活動期間 2011年~2017年

引用:*1 福田和也「作家の値うち」