乃木坂46 中元日芽香 評価

乃木坂46

 

「居場所もなかった」

「文學界の名言の1つに女の被害妄想は才能の証という台詞がある」(*1)これはアイドル・中元日芽香にも当て嵌まるのではないか。「夢と境界の不分明、現実と妄想の相互浸透といった月並みな」(*2)キャラクター設定と強烈な被害妄想がアイドル・中元日芽香の多様性をつくるのである。しかし、同時にその被害妄想は中元日芽香のカタルシスの沸点を一日増しに高くさせてしまったようだ。行き着く先は、どこまでいっても決して満足ができない、地下のロックフェスで自傷行為を繰り返すロックバンドのボーカルのように、死以外ではカタルシスを得られない人間だ。

2016年の乃木坂46アンダー・クリスマスライブでの中元日芽香への歓声と震撼は今でも覚えている。幼少時、田舎の湖上祭で打ち上げ花火をはじめて見物した時の震動と恐怖を私は思い出した。地面が抜け、柱が崩壊するのではないか、という緊張の共有は、演者と観者に言いようのない一体感をあたえた。しかし、中元日芽香はそこで満足することはなかったようだ。そこが、その場所が、自分の居場所だと考えることができなかった。それは、とても、かなしい孤独感だとおもう。そして、その空虚を、心にぽっかり開いた穴を埋めるために、中元日芽香はゴネるのである。オモチャ売り場で駄々をこねる子供のように。

「僕がボクシングを気に入った理由のひとつは、そこに深みがあるからです。その深みが僕を捉えたんだと思います。それに比べたら殴ったり殴られたりなんて本当にどうでもいいことなんです。そんなのは結果にすぎないんです。人は勝つこともあるし、負けることもあります。でもその深みを理解できていれば、人はたとえ負けたとしても、傷つきはしません。人はあらゆるものに勝つわけにはいかないんです。人はいつか必ず負けます。大事なのはその深みを理解することなのです」

(村上春樹「沈黙」)

負けることを受け入れ、その”深み”を彼女が理解したときに、はじめて、彼女の居場所ができるのだろう。

 

総合評価 67点
アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 11点 ライブ表現 15点

演劇表現 12点 バラエティ 11点

情動感染 18点

 

乃木坂46 活動期間 2011年~2017年
引用「」(1*)(2*)福田和也「作家の値うち」

評価点数の見方