NGT48 高橋七実 評判記

「寄り道をしよう」
高橋七実、平成13年、NGT48のドラフト3期生。
NGT48の「次世代」を担う少女の群像を描いた『今日は負けでもいい』(『短い夏の、さよなら』)において強い主人公として描かれた少女の内の一人であり、その可能性の喪失つまり夢の破断を描いた登場人物。
しめやかな横顔、知的に情動を宿したような目つき、脆弱さ、高いプライドを持った英国人的な佇まいには、たしかに、眺めれば眺めるほど引き込まれてしまうような、強い魅力があった。とくに『今日は負けでもいい』の映像作品でスケッチされた高橋の横顔には次世代エースとしての憧憬を叶える、アイドルの内に秘められた可能性が映し出されていた。また、『AKB48グループリクエストアワー セットリストベスト50 2020』において高倉萌香のアンダーとして出演し披露した『モニカ、夜明けだ』では、AKBグループの未来を担うべき少女たちと並び、瑞々しく、鋭く、力強い光を放っている。たとえばその12個の発光体は、坂道シリーズに所属する多くの若手アイドルの輝きを凌ぎ、表現力をもって打倒するものであり、まさしくAKBグループの夜明けとしての胎動であり、高橋もその胎動のひとつとして文句なしの手触りを伝えている。
だが、彼女はすでにグループを去っている。16歳でアイドルの扉をひらき、18歳でその扉を閉じる。今日のアイドルシーンに鑑みれば、あまりにも早すぎる決断のように感じる。表題作の歌唱メンバーに選抜された経験も持っておらず、物語性に乏しい。つまりこのひともまた、夢と現のあいだに置かれた扉をくぐる際のメルクマールとして常に「絶望」が準備される、くすんだ時代の一端を覆う登場人物の一人と扱うほかないようだ。村雲颯香、長谷川玲奈らと同様、「山口真帆」の枠組みに押し込まれることでアイドルの物語が正当に評価されない、読まれないという憂いに高橋もまた沈んでいる。
とはいえ、「絶望」の内にさらなる「絶望」が訪れてしまうといった、本物の悲痛による喪失感を仲間のアイドルとファンの双方に経験させた少女たちの多くが、未だノスタルジーを提示しておらず、夢の世界にとどまり、ほんとうの夢をつかむための闘いを他者に向け物語っていることを忘れてはならないだろう。高橋七実もまた”次の夢”の世界に立ち、そこで群青色をした笑顔を作り、踊っている。常に過去にさかのぼりつつ未来へと踏み込む、といった情況に置かれた少女が、夢の破断を経験した少女が、夢の反復を描き遠回りし寄り道する少女がどのような未来をつかむのか、という意味でも高橋七実は興味深い存在であり続けている。
総合評価 62点
アイドルとして活力を与える人物
(評価内訳)
ビジュアル 13点 ライブ表現 12点
演劇表現 13点 バラエティ 12点
情動感染 12点
NGT48 活動期間 2018年~2020年