欅坂46 今泉佑唯 評価

欅坂46

今泉佑唯 (C) 欅坂46公式サイト

「赤と黒」

「あなたは聖人ねソレルさん」と、相手はますます関心のほどを見せていった。「こんな舞踏会やお祭り騒ぎを、まるで哲学者みたいに眺めてらっしゃるのね、ジャン=ジャック・ルソーみたいに。こんな気違い沙汰をごらんになっても、あきれるだけで、おもしろくはないんでしょう」

スタンダール/赤と黒

今泉佑唯、平成10年生、欅坂46のオープニンメンバー。
きわめてエモーショナルなアイドルであり、その情動が描き出す、剥き出しの闘争心や、アイドルを演じる行為へ向ける歓喜や苦渋は、デビュー初期からグループの絶対的な主人公と扱われた平手友梨奈のアンチテーゼと扱われる場面も多かったが、むしろ日常を演じる少女が現実と仮想を行き交いする際に落とす切迫したリアリティは平手友梨奈の精神的孤独と通いあっており、皮肉の結晶を作った。キュートなビジュアルの持ち主であったが、ある段階を踏み越えてからは、ヴァルネラブルの存在が露出し、形容することがむずかしい、奇妙な色っぽさと笑顔を湛えるアイドルへと成長した。アイドルが成長をする場面とは、往々にして、アイドル自身が意図しない出来事(現在を過去と未来が挟撃するような真っ暗闇のトンネルを駆け抜ける出来事)に遭遇し、それを切り抜けたときだ。アイドル・今泉佑唯が魅せる表情は耽美主義に属する美ではない。それは、生まれながらに授かっていた美が、内側にかくれていた美が、心に傷を負った際に、その傷口からにじみ出てしまった美である。「完全な美しさというものは、生まれつきそなわっていて、とりわけ当人がそれを意識しない場合」、季節の記憶となるような「効果」を生むことになる。(*1)
それが直接、アイドルの卒業理由になってしまうことも多いが、美の成熟過程こそ、アイドルを応援するうえでの醍醐味であり、アイドルを演じる少女が高い評価を獲得するための原動力になる。聖人を『白痴』として、赤色と黒色で描いたのがドストエフスキーだが、今泉もまた、赤と黒を抱え込む、グループアイドルが描く長編小説の登場人物のひとりと呼べるだろう。今泉佑唯が時折覗かせる「空想の翼」をもぎとるような強張った微笑は、彼女の物語を読む者の「心から幻想」を追い払い、ある種の現実感を与える。架空の世界への没入から唐突に現実へ引き戻された人間は、怒り、戸惑うものだ。今泉佑唯は、”その美”を掲げたばかりに、アイドルという虚構に身を置く限り、観者の剥き出しにされた感情と常に向き合い、闘い、許容しなければならない宿命を背負ってしまった。もちろん、それを眺めるファンにも、覚悟の要求が生まれる。今泉佑唯に想いを伝えると、それがどれだけ優しさに包まれた言葉であっても、彼女を深く傷つけてしまうかもしれない、アイドルが毀れてしまうかもしれない、ファンはそれを自覚しなければならない。でも、それでも彼女の”核”に触れてみたいと想わせる、赤い非常ボタンのような存在、そんな空気感を身にまとった少女。「相手の心にふれるといっても、これを傷つけないではすまない」、そんなアイドルを今泉佑唯は描いた。(*2)

 

総合評価 66点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 14点 ライブ表現 13点

演劇表現 12点 バラエティ 13点

情動感染 14点

欅坂46 活動期間 2015年~2018年

引用:(*1)(*2) スタンダール/赤と黒/訳 小林正

 

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