日向坂46 4期生のお披露目動画と「ブルーベリー&ラズベリー」の感想

ブログ, 日向坂46(けやき坂46)

(C)ブルーベリー&ラズベリー ミュージックビデオ

「似ているような 全然似ていない」

日向坂46に「4期」が誕生した。数えると、12名。一日一人、プロフィール動画が公開され、さらには4期生楽曲のミュージックビデオも公開された。つい先日、シングル表題作『月と星が踊るMidnight』のミュージックビデオが公開されたばかり、だと思うのだが。情報消化、そのスピード要求に困惑させられるものの、このフットワークの軽さ、情報量の多さこそトップアイドルグループの”証”なのだろうか。
正直に云えば、「関心」が追いつかない。最近の、アイドルシーンの話題性を考えれば、多くのファンが、この新しくシーンに登場した12名の少女を乃木坂46の5期生と比較してしまうのも避けられない流れのようにおもう。個人的には、乃木坂46の5期生と日向坂46の4期生を眺める際の、もっとも決定的な差異とは、興味があるから眺める、ではなく、眺めていたら興味が湧いてきた、でもなく、興味を持つためだけにその12名の少女を眺めてみる、という点になるだろうか。アイドル観の彫琢、と表現しても良い。往々にして、こうした情況にあるほうが、アイドルの魅力を見出しやすいし、魅力があるアイドルと、なんら魅力を持たないアイドルを自己の内で明確に隔てることができる。

実際に少女たちを眺めてみると、前評判どおり、たしかに、似たりよったり、に見えなくもない。作り手の内で、理想・イメージの共有があるのだろうか。全体として、次の、あたらしいイロ、を描き出そうとしているのだろうか。おもしろいのは、個々をしっかりと眺めれば、それぞれ独立した表情を持った、瑞々しいアイドルであることに違いないのに、しかしその個々が横一列に並べば、見事なグラデーションが描かれ、統一感さえ生まれる点だ。「似ているような 全然似ていない僕たち」などと、歌っていたりもする。群像、と形容して差し支えない、少女の集合、に見える。たしかに、レジティマシーとしての、ジョイフルラブ、がある。なによりも、ミュージックビデオの完成度の高さに驚かされる。*1

まずは、ミュージックビデオとプロフィール画像を照らし合わせながら、一人ずつ、眺める。次に、気になった場面・表情があれば映像を止め、これは誰だったかな?、と呟き誰何しつつ、もう一度プロフィールに戻る…、という作業を繰り返した。
ひとつのミュージックビデオをこれだけ長時間、繰り返し眺めたのはNGT48の『今日は負けでもいい』以来かもしれない。デビューしたばかりの新米アイドルによる作品、そのミュージックビデオに限って云えば、『今日は負けでもいい』はファン、同業者の評価の一致した傑作だが、『ブルーベリー&ラズベリー』もなかなかに魅力的な作品に感じる。『今日は負けでもいい』が「アイドル」の幼稚さを大胆に写しアイドルガイドとして文句なしの構図を叶えたのとおなじように(『今日は負けでもいい』を眺め、後にグループの表題作のセンターを2作品連続で務める少女がだれなのか、可能性を見出すことに成功したファンはどれだけいただろうか。もし同作品を、NGT48をまだ知らない読者がいるならば、映像を眺め、そのなかのだれが、将来のセンターなのか、読み、問いかけてみるといい)、『ブルーベリー&ラズベリー』もまた夢の世界の扉をひらいたばかりの、夢見る少女のアイドルガイドとして、文句なしの構図、表現を作っているかに見える。
驚いたのは、少女たちの「踊り」になるだろうか。これまでに制作された他のアイドルの、映像作品におけるライブパフォーマンスに対し、すでに遜色ないレベルにある、という点におもしろさを感じた。デビューしたばかりのアイドルの作品を眺めて、瑞々しさはともかく、初々しさ生硬さのなかにある違和感つまり”ぎこちなさ”のようなものを、『ブルーベリー&ラズベリー』からはほとんど拾えない。
これは「アイドル」という存在、その有り様そのものが、幼稚だから、百戦錬磨のアイドルによる作品とデビューしたてのアイドルの作品とに、質の差がほとんどないのだ、という内奥の確信を握らせるのに十分におもう。もちろん、現実的なことを云えば、振り付けが練られている、振り付け師に才能がある。今回のオーディションにおいてはこれまで以上に「踊り」が重要視されたのか、「踊れること」が少女に求められたのか、あるいは、合格後、厳しいレッスンを重ねたのかもしれないが。
いずれにせよ、それぞれが、すでにプロの「アイドル」として、映されているようにおもう。この映像だけでも、少女たちの魅力を知り、その才能の片端に触れることができるようにおもう。

以下に、日向坂46・4期生のプロフィール画像、『ブルーベリー&ラズベリー』のミュージックビデオを眺めた際の、感想、所感、メモを記しておく。今後、機会があれば、この短いメモを切り口にして、乃木坂46・5期生に対して書いたような、注目度ランキングを作りたいと考えている。
ちなみに、デビューしたばかりのアイドルのことを褒めすぎると、途端に、文章の説得力が失せる。ファンはすでに、未来への可能性ではなく、ほんとうに才能のある、魅力あるアイドルを見知っているわけだから、当然だ。突然現れた見知らぬ少女のことを、自分の知っているアイドルへの称賛と同じ意で”逸材”と云われても、ピンと来るわけがない。とはいえ、文章を書く側がそうした事情を考慮し頭を悩ます必要はまったくない。この問答を一刀両断することは、実は容易い。新米アイドルを、ベテランのアイドルたちと同じ机に並べ、同等の評価基準のもと、その横顔を眺めるだけでいい。日向坂46の新加入メンバーを評価するのだから、当然、その評価基準の大部分を占めるのは、加藤史帆だったり、小坂菜緒だったり、丹生明里になるのだろう。以下に記したメモは、そうした基準のもとノートに書き込んだ、感情を捻じ曲げた過褒などではない走り書き=本音、となる。

(C)ブルーベリー&ラズベリー ミュージックビデオ

日向坂46 4期生 一覧  括弧内はお披露目時の年齢

清水理央(17)
4期生楽曲のセンターに選ばれた。グループの、次の主人公候補、ということなのだろうか。笑顔、ダンス、共に躍動感と技巧の大仰さに満ちている。このアイドルがセンターで笑うから、他のアイドルがナチュラルに見えるのかもしれない。

宮地すみれ(16)
日向坂っぽさ、なるものを編み出そうと構想する作り手の、その想像力の一翼を担う存在に見える。ビジュアル良し。笑顔良し。

正源司陽子(15)
逸材。坂道シリーズを代表する存在に成長する可能性有り。今回のオーディションの成功を裏付けるメンバー。

石塚瑶季(18)
とくに所感なし。

山下葉留花(19)
もうすでに「アイドル」にキャラクターがあるように見える。

平尾帆夏(19)
とくに所感なし。

渡辺莉奈(13)
逸材、か。可憐な横顔。もっとも強い存在感。

藤嶌果歩(16)
とくに所感なし。

平岡海月(20)
他のメンバーとの見分けは容易につく。

竹内希来里(16)
場面場面で見え方が変わる。メランコリック、パラノイア、など、どんな形容を用いても、似合いそう。

岸帆夏(18)
とくに所感なし。

小西夏菜実(18)
少女たちの顔の見分けがつかない、という話題をもっとも手伝っているのが、確信させるのが、最終日にお披露目された、このアイドルだとおもう。笑顔、横顔、表情のいずれもが他のいずれかの少女と重なり合って見える、そんな場面が多い。小西夏菜実本人を探そうとしても、迷子になるほどに。ヌエ、かもしれない。とはいえ、こうしたイメージは早々に払拭されてしまうのだろうけど。


プロの作家としてデビューしたいのであれば、新人賞の審査員、プロの編集者に認められるしかない。裏を返せば、たった一人で良い、社会の機微に通じた一人の人間に自己の才能を認められたのならば、本が編まれ、出版され、世間にその存在を認知される。作家として認められる。アイドルもまったくおなじだろう。ある一人の審査員にその才能・魅力を見出され、デビューする、アイドルファンに認知される。アイドルとして認められる、そんな場合がほとんどではないか。つまりファン=大衆に認められたからアイドルとしてデビューできたわけではない、ということだ。一人の、ごく少数のプロの審査員に余人にはない資質を見出されたから、芸能界にデビューした、夢の扉がひらいたのだ。どうかこの事実を卒業するその日まで、忘れないでいてほしい、と願ったりもする。私たちファンの評価など、アイドル本人がそなえ持つその無限の魅力とはまったく関係ない「声」に過ぎないのだ、という事実を。

2022/10/04  楠木かなえ

見出し、*1 秋元康 / ブルーベリー&ラズベリー
2022/10/06  誤字脱字の修正、批評欄の加筆をしました